1989 Fiscal Year Annual Research Report
間歇性カオスの大域的スペクトル構造と時空スケ-リング則の統計物理学的研究
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63540276
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡本 寿夫 九州大学, 理学部, 助教授 (50037222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 肇 九州大学, 理学部, 教授 (90037143)
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Keywords | カオス / 間歇性カオス / パワ-スペクトル / カオスの動的構造関数の統計熱力学形式 / カオスにおけるq-相転移 / カオスの粗視化された局所的軌道拡大率 / 微分方程式系のカオス |
Research Abstract |
非平衡解放系の非線形ダイナミックスを散逸力学系の立場から作る気運が1980年前後から急速に高まってきた。その契機は運動形態の転移(分岐現象)に対する力学系理論の発展と、閉水路系の流体乱流、非線形化学反応、非線形振動子等におけるカオス発生の物理的実験の登場とである。周期運動から非周期運動(カオス)が発生する普遍的シナリオとして、周期倍化のカスケ-ドによるもの、バ-ストが間歇的に現われることによるもの、準周期運動を表わすト-ラスが崩壊することによるもの、の3つが明らかになってきた。これら3つのシナリオによって発生したカオスを、それぞれ、周期性カオス、間歇性カオス、準周期性カオスと呼ぶ。カオスの際立った性質(挙動と応答)は、時間及び空間のスケ-ルについて、諸種のスケ-リング則を示すことと、order in chaosと言われるように、著しい時間相関・コヒ-レンスを示すことである。本研究は、上記の3種のカオスのみならず、カオスの諸種の運動形態間の転移(バンド分裂、クライシス等)を解明することを目的とした。これが、非線形非平衡系の統計物理への第一歩と考えられるからである。したがって、非線形非平衡系の普遍的運動形態であるカオスと乱流に対する統計力学的パラダイムの構築を目指して、次の研究を行った。 1.森のグル-プによって発見されたカオスの動的構造関数の統計熱力学形式とq-相転移法の応用と発展。(1)タイプIの間歇性カオス、(2)臨界アトラクタ-の動的記述、(3)バンド間の間歇的飛び移り現象、(4)保存系のカオスにおける長時間相関と加速モ-ドによる異常拡散現象、(5)q-相転移のタイプの分類。 2.周期的外力の作用する微分方程式系で発生するカオス的運動の分岐点で現れるq-相転移の研究。(1)振り子の場合、(2)Duffing方程式の場合、(3)アトラクタ-の融合。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 冨田浩治: "q-Phase Transitions in Chaotic Attractors of Differential Equations at Bifurcation Points." Progress of Theoretical Physics. 81. 1124-1134 (1989)
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[Publications] 小林達治: "Critical Scaling Laws of Dynamical Structure Functions for Type I Intermittent Chaos." Progress of Theoretical Physics. 82. 1-6 (1989)
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[Publications] 森肇: "Statistical Mechanics of Dynamical System" Progress of Theoretical Physics Supplement(森肇教授記念特集号). 99. (1990)
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[Publications] 森肇: "カオスの特徴をどのように取り出すか" 数理科学. 27. 42 (1989)
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[Publications] 森肇: "カオスにみる複雑さの中の秩序構造" 日本物理学会誌. 44. 316-322 (1989)
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[Publications] 岡本寿夫: "低次元磁性体の異常磁気緩和とESR" 数理科学. 28. 24-29 (1990)
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[Publications] 日本物理学会編: "計算物理学ーコンピュ-タ-支援による物理学の新しい展開ー" 倍風館, 288 (1990)
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[Publications] 森肇: "統計力学" 共立出版, (1990)