1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63540283
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立川 真樹 東京大学, 理学部, 助手 (60201612)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 房和 富山大学, 理学部, 助教授 (40142236)
清水 忠雄 東京大学, 理学部, 教授 (90011668)
|
Keywords | 超音速分子線 / 非平衡状態 / 回転温度 / 断熱膨張 / レーザーシュタルク分光 / アンモニア / 衝突緩和 / 双極子-双極子相互作用 |
Research Abstract |
断熱膨張によって並進温度が極低温までになる超音速分子線においては、振動・回転・並進の各自由度間で温度が異なることが知られている。本研究では、さらに、回転状態がどの様なエネルギー分布になっているかを調べ、超音速分子線中における非平衡分布の形成のメカニズムを解明することを目的としている。これについて、以下の成果を得た。 1.既存のN_2Oレーザーに加えて、10μm帯の半導体レーザーを整備し、高感度のシュタルク分光法を用いて、NH_3分子の6本の吸収線について線形吸収分光を行った。NH_3超音速分子線の、ノズルから比較的離れた位置数カ所において、回転準位における分子数分布を測定し、分子線の上流から下流にかけての各レベル間の回転温度の変化を系統的に調べた。その結果、以下のことが明かになった。(1)回転の自由度内においても、分子は非平衡分布をしており、回転状態は単一の温度で記述できない。(2)特に、(2,2,a)-(2,1,a)間及び、(2,2,s)-(2,1,s)間(( )内の数字は、左から、回転の量子数J、Kで、a、sは対称性を表す)で、反転分布が生じており、分子線の下流にいくにつれて反転が大きくなっている。 2.双極子-双極子相互作用による緩和と、より近距離で働くhard collisionによる緩和、及び、個別つりあいの原理の3点を考慮したレート方程式モデルを立て、数値計算を行った結果、実験で得られた各回転準位間の温度及びその位置依存性を再現することができた。以上の解析から、双極子遷移による各レベル間の緩和レートのJ,K依存性が、非平衡分布の形成に大きな役割を果たしていること、及び(2,2,s)-(2,1,s)間に現れた負温度(反転)分布形成には、双極子-双極子相互作用よりも一桁程小さい断面積を持つhard collisionの効果が不可欠であることが明らかになった。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] Y.Tanaka,・Y.Uematsu,・M.Tachikawa,・T.Shimizu,・F.Matsushima: Journal of Chemical Physics.