1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63540288
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 眞 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助手 (30144398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向上 毅 京都大学, 化学研究所, 教授 (20027048)
五十棲 泰人 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助手 (50027603)
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Keywords | α崩壊 / 非等方性 / LX線 / ^<210>Po |
Research Abstract |
本番測定に先だって我々はまず、α崩壊における非等方的LX線放出機構を破壊する可能性のある外殻電子の多重電離状態が存在するか否かを調査した。この理由は特にここ数年来、重イオンー原子衝突の分野における非等方的LX線放出の研究から重イオン衝撃によって生ずる多重空孔によって非等方性が弱められるという報告がなされているからである。 本研究に関連して我々は、α崩壊及び重イオン衝突が娘(標的)原子の電子系に与える影響を外殻、内殻電離を通じて研究してきているが(Phys.Lett.A,Nucl.Instrum.and Methods及び、J.Phys.Bに発表済み)、これらの成果からLX線のなかで特にLγ線が外殻電子状態を敏感に反映することを発見している。(Lγ線は収量が小さいために実験的調査が遅れている。詳細は我々の平成元年度科研費計画調書、一般研究(C)「重イオンー固体衝突における高分解能LX線測定」に述べてある。) この着想に基いてM、N殻の多重電離を調査するために、POー210のα崩壊より放出されるPbのLγ線エネルギースペクトルを観測し、きめ細かく分析した。その結果Lγ線を6本の成分に分解しそれぞれのエネルギーシフト及び相対的収量比からM殻に空孔は存在せず、N殻に存在しても高々1個であるという結論を得た。この結果は、本研究申請に詳述した理由によって、α崩壊に於ては大きな非等方性が存在し得ることを強く示唆している。この結果を京都大学化学研究所紀要に発表した。上記の結果を踏まえて非等方性測定実験は現在進行中である。更にα粒子がCoulomb Barrierをトンネル現象で通過し、その後衝突径数=0、外向き波のみからなる過程を経るという、一般荷電粒子衝突と異なるα崩壊の特質を組み入れた理論計算が相対論的半古典近似(Relativistic SCA)を用いて進んでおり、本研究で得られた成果すべてを合わせて今夏New Yorkで開催される国際会議(ICPEAC)に発表する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Ito: To be submitted to the Abstracts of the Inter.Conf.on the Phys.of Electronic and Atomic Collisions,New York,July,1989.
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[Publications] S.Ito: Bulletin of the Institute for Chemical Research,Kyoto University. 67. (1989)
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[Publications] S.Kishimoto: Inter.J.of Applied Radiation and Isotopes. in press. (1989)
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[Publications] T.Mukoyama: Physics Letters A. 131. 182-185 (1988)
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[Publications] S.Ito: Nucl.Instrum.and Methods. B28. 331-335 (1987)
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[Publications] S.Ito.: J.Phys.B:At.Mol.Phys.20. L597-L601 (1987)
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[Publications] S.Ito: J.Phys.B:At.Mol.Phys.20. L597-L601 (1987)