1988 Fiscal Year Annual Research Report
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63540344
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 研一 名古屋大学, 教養部, 助教授 (80110823)
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Keywords | 非線形振動 / リズム現象 / 時空間の秩序 / 自己秩序形成 / 引き込み現象 / 単分子膜 / 非線形微分方程式 |
Research Abstract |
生体は、膜を用いることにより、様々な時間的リズムを実現させている。本研究では、人工的な界面や膜で、生体類似のリズム現象を調ベることを主目的とした。具体的には、このような成果が得られた。 1)油水界面での発振現象。 リン脂質存在下、油水界面で、自発的な発振が生じることを見い出した。電位と界面張力を同時測定できるシステムを試作して、発振現象を系統的に調べた。その結果、リン脂質が、油水界面上で、単分子膜の形成・破壊を繰り返していることが、発振現象の原因であることが明らかとなった。また、理論的にも、非線形微分方程式により、発振現象のシミュレーションを行ない、実験で得られた発振波形を再現することに成功した。ここで、リン脂質単分子膜の非線形特性が、発振波形に決定的な影響を与えていることを明らかにした。このような単分子膜に非線形特性を、さらに、動的なπーA特性(界面張力ー面積の関係)を、測定することにより、詳細に調べ、非線形特性と、発振波形の関連を定量的に解明することに成功した。 2)水力学的発振子の研究. 単一の細孔を介して、濃度の異なる水溶液を接触させると、自励振動を再現性良く生じさせることができる。このような振動子を、複数個共存させた実験系をつくり、振動子間の相互作用を系統的に研究した。その結果、各種の引き込みパターンが生じることが明らかとなった。このように、非線形の強い振動子の相互作用系では、秩序がむしろ形成される方向への変化が安定であることが明らかとなってきた。これはこれまで理論的にも全く手がついていなかった分野であり、数学、物理、化学、生物、どの領域にも、大きなインパクトを与えるものとなっている。 以上、全体として、当初の研究計画を上廻る、貴重な成果が得られた。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 吉川研一: Biophysical Chemistry. 29. 293-299 (1988)
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[Publications] 吉川研一: Langmuir. 4. 759-762 (1988)
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[Publications] 坂本明雄: Chem.Phys.Lett.146. 444-448 (1988)
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[Publications] 吉川研一: 現代化学. 4月号. 56-61 (1988)
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[Publications] 吉川研一: 表面. 11月号. 786-795 (1988)
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[Publications] 吉川研一: 化学. 12月号. 781 (1988)
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[Publications] 吉永哲哉: 電子情報通信学会論文誌. J71ーA. 1843-1851 (1988)
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[Publications] 吉川研一: Ferroelectrics. 77. (1988)
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[Publications] 吉川研一: J.Chem.Edu.(1989)