1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63540402
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 宣次郎 九州大学, 理学部, 助教授 (70001849)
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Keywords | シクロブタンの熱分解 / 炭素-炭素ヘテロリシス / 双極性イオン中間体 |
Research Abstract |
高極性の炭素-炭素結合を含むシクロブタンの熱分解では、従来の協奏機構やラジカル反応の他にイオン開裂の可能性があるが、TCNEとα-トリメチルシロキシスチレン(1)および2-メチル-2-プロペニルトリメチルシラン(2)との環化付加物(それぞれ3、4)の熱分解反応を詳細に調べた結果、これらがヘテロリシスを律速としたイオン機構で進行することが明らかとなった。3は無極性溶媒中でも室温で容易に分解して1を与えるが、この反応の動力学はシクロペンダジエンを加えて副成するTCNEを捕捉し逆反応を抑えることで解析が可能となり、顕著な極性溶媒効果(例えば重クロロホルムを3等量の四塩化炭素で稀釈すると反応速度は10分の1となり、一方10%のアセトニトリルを加えると15倍加速される)とフェニル基上の置換基効果がα^+に対してρ=-2.7を与えることから、炭素-炭素のヘテロリンスをともなって生成する双極性イオン中間体(5)を経て進行していることが立証される。この反応の活性化パラメーターΔH^≠、ΔS^≠はそれぞれ、15.6Kcal/mol、-17e.u.であり、逆反応の環化付加反応が極端なエントロピー支配(ΔS^≠55e.u)であるのと対照的に主としてヘテロリシスにおけるエンタルピーに依存している。3の分解速度は4位のメチル基の導入によって顕著に減速し(例えば4、4-ジメチル体は3に比べ9300倍遅い)、この立体効果は、ヘテロリシスに対して予想されるエントロピー変化よりも大きな負のΔS^≠値と併せて中間体5からTCNEと1への分解がU型双極性イオンからZ型への立体配座の変換を必要とすることを示す事実として興味深い。また4-メチル体ではシス、トランス異性化と分解が同時に観測され、中間体の閉環、分解素過程の速度比として1.7が求められた。同様の結論は4の分解反応からも得られ、高極性炭素-炭素結合をもつシクロブタンの熱分解ではイオン閉裂が一般的であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)