1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63540496
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Research Institution | Daido Institute of Technology |
Principal Investigator |
山寺 秀雄 大同工業大学, 工学部, 教授 (70022499)
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Keywords | 配位子場 / 角重なり模型 / X線吸収スペクトル / 銅錯体 / テトラクロロ銅錯体 / 電気四極子遷移 / d-p混合 |
Research Abstract |
佐野らが昭和63年10月に発表した銅(II)錯体のX線吸収スペクトルにおけるIs-3d遷移の強さと錯体の形との相関は、本研究の対象として最もふさわしいものであると考えたので、当初の研究計画を変更して子の問題をとり上げ、下記の成果を得た。 (4月日本化学会年会、7月国際錯体化学会議で発表の予定。当初の計画は次年度に延期。) 佐野らの実験結果では、銅(II)錯体のIs-3d吸収は、錯体の形が平面型から正四面体型に近づくに従って、その強度を増す。この遷移は禁制遷移であって、(1)電気四極子遷移、(2)銅イオンのまわりの原子配列の非対称性、(3)分子振動とのカップリング、(4)配位子の摂動による中心イオンのd軌道とp軌道の混合、などの原因により弱く許される。定性的ないし判定量的考察により、(1)-(3)に比べて(4)のd-p混合が重要であることを予想した。[Cu Cl_4]^<2->は相手イオンの種類により結晶中で平面型から四面体型までのいろいろな形をとる。配位子が変わらず形だけが異るので、角重なり模型を適用するのに最適である。この模型を用い、二つのCL-Cu-CL面の間の二面体角の関数としてCuの3d軌道への4p軌道の混合の(相対的な)大きさを計算した。Is→4pは許容遷移であるから、この混合の大きさの2乗が吸収強度に比例するはずである。このようにして、理論的に求めた二面体角と吸収強度の関係を実験値を比較したところよい一致を得た。またIs→3d遷移に関して許容である電気四極子遷移が、一部の研究者が予想しているよりはるかに弱い理由として、(1)銅のIs軌道のひろがりが小さい、(2)3d軌道では原子核近傍(すなわちIs軌道領域)における電子の存在確率が小さいことを示した。
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