1988 Fiscal Year Annual Research Report
物質循環様式の把握による植物プランクトン群集の遷移機構の研究
Project/Area Number |
63540519
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂本 充 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (30022536)
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Keywords | 物質循環 / 植物プランクトン / 炭素 / 窒素 / 安定同位体 / 同位体希釈法 |
Research Abstract |
本研究は、生体の主要構成元素の炭素、窒素が、自然水域においてどのように植物プランクトンの増殖を律速しているかを明らかにするため、(1)安定同位体をトレーサーとして用い、藻体構成有機物の合成過程を定量的に追求する、(2)同位体希釈法により炭素、窒素のとりこみと回〓速度の同時把握を行う、の2つの方法により、自然水域の群集の安定化、変動をもたらす物質循環機構を解明することを目的としている。 1.(1)については、長野県深見池を主フィールドに選び、1988年3月より10月にかけ、2mと5mの2層について、炭素、窒素の藻体構成有機物へのとりこみの様相を追うと共に、それら有機物の炭素安定同位体比の変動をしらべた。その結果、藻体の蛋白質へとりこまれる炭素、窒素には、新たに細胞外からとり入れられたものと、細胞内の貯藏性有機物由来のものとがあり、炭素は窒素にくらべて、貯藏性有機物に依存する割合が高かった。このような炭素、窒素の代謝の差が安定同位体比に如何に反映するかを明らかにするため、現在安定同位体比の分析を続けている。 2.(2)の研究をすすめるに必要な水中のNH^+_4の^<15>Natom%の測定法の検討を進めた。橋谷法で発色、クロロホルムに抽出したインドチモールをグラスファイバーフィルターに吸着せさ、同位体比を質量分析する方法の開発に成功し、70%の回収率を得た。木崎湖などNH^+_4濃度のうすい自然水における^<15>Natom%の測定への同上方法の検討を進め、Dowex50H型イオン交換〓脂の使用がほづ理想的濃縮法であることがわかった。また10μgatN/lのキャリアーの添加では、トレーサー実験において大きな誤差を生ずることなく^<15>NH^+_4同位体比測定が可能なことがわかった。 現在、上記の研究結果をもとに、平成元年度における自然水域での炭素、窒素代謝速度の測定の具体案が殆んど確立された状態である。
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