1989 Fiscal Year Annual Research Report
物質循環様式の把握による植物プランクトン群集の遷移機構の研究
Project/Area Number |
63540519
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Research Institution | Water Research Institute, Nagoya University |
Principal Investigator |
坂本 充 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (30022536)
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Keywords | 湖沼 / 内湾 / 植物プランクトン / 栄養塩回帰 / 天然安定同位体比 / トレ-サ- / 光合成 / 赤潮 |
Research Abstract |
本研究は湖沼・内湾における従属栄養生物の活動による水中の栄養塩回帰が、植物プランクトン増殖を如何に支配しているか、その支配状況が如何に植物プランクトン群集の時空間的変動に関っているかを解析することにより、自然水域の植物プランクトン群集の発達と安定化の機構を解明することを目的とした。とくに、天然炭素安定同位体比による解析と、炭素・窒素安定同位体をトレ-サ-とする手法を併用して、植物プランクトンの増殖の律速状態と栄養塩回帰の把握を行い、目的達成をはかった。フィ-ルドとしては、木崎湖、三河湾でも調査を進め、次の事実が明らかとなった。 1.三河湾では、植物プランクトンの光合成活性は赤潮頻発期の7月に最大となりその変動巾も最大となるが、9月以降は両者ともに小さくなる。懸濁物の炭素安定同位体比についても7月に値は最大で変動巾も大きいが、9月以降は小さくなる。これらの結果は、7月の赤潮発生時には一次生産が活発で増殖も活発におきているが、時空間的に不均一な栄養塩供給によって、パッチ状に赤潮が短周期の増減をくりかえしていることを示す。 2.インドチモ-ル色素溶媒抽出法による水中NH_4窒素の同位体比測定法を確立した後、木崎湖における植物プランクトン群集のNH_4取込みと再生の時空間的変化とサイズ依存性を調べた。NH_4の取込みと再生は水深と季節により大きく変化し、変化巾は取込みでより大きかった。又、20μm以下の分画では再生が優古化するのに対し、取込活性が20μm以上の分画でより大きかった。この事実は、環境の変化は大型のプランクトンの光合成生産過程により大きく影響する結果として群集の変動がおこることを示す。20μm以下は環境の影響がより少なく、定常的にNH_4を植物に供給し、取込との非平衡ができると群集の衰退をもたらすと考えられる。
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