1988 Fiscal Year Annual Research Report
シマトビケラ類(水生昆虫)による「すみわけ」論の実証的研究
Project/Area Number |
63540522
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
谷田 一三 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (20167505)
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Keywords | シマトビケラ類 / 「すみわけ」 / 水生昆虫 / 生活環 / 石礫表面積 / ダム流出流 / 系統分類 |
Research Abstract |
日本産シマトビケラ属9種のうち、唯一種成虫の判明していなかったイカリシマトビケラHydropsyche ancorapunctata TANIDAの雌雄成虫が、野外及び幼虫の飼育によって得られた。この種類についての分類学的な報文を作成中である。また、日本産の種類と極めて関連性の深い台湾産及び韓国産のシマトビケラ属の成虫と幼虫が入手、採集することができたので、それらの分類・系統学的な研究を行なっている。 大和川水系支流の石川では、2週間ごとに4定点(うち1定点はダム流出流)で定期調査を実施し、13ケ月分の資料を収集した。令期・生活環・密度変動などを解析中であるが、ウルマーシマトビケラ、コガタシマトビケラは、成虫の羽化期が長く、世代の重なりの大きい、年2〜3世代の生活環を、オオヤマシマトビケラはやはり成虫の羽化期は長いものの年1世代と推定できた。しかし、この様に調査間隔の短い調査であっても、個々の幼虫・蛹の生体重を測定し、成長様式を分析しなければ、世代数の確定さえ、困難なことが判明した。 石面付着性のシマトビケラ類など幼虫の、生息場所量、密度測定に不可欠な石礫表面積の推定には、各々の石礫の長さ・幅・高さに加えて、容積を用いることによって、従来提唱されている表面積推定法より、さらに簡便で、正確な方法を確立した(短報準備中)。 北海道の2、3の河川で、ウルマーシマトビケラとキタシマトビケラの生態分布の予備調査を実施した。キタシマトビケラは、本州におけるナカハラシマトビケラと、よく似た生態的地位をもつことが判明した。 「すみわけ」モデルについては、シマトビケラ類以外の水生昆虫についての資料や反論も収載した「日本の水生昆虫」(共編、東海大出版)を刊行した。系統と生態との関連性を重視する「すみわけ」モデルの有効性は、ヒラタカゲロウ・シマトビケラ類以外の生物群でも示唆された。
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[Publications] 谷田一三: 石川県白山自然保護センター研究報告.
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[Publications] 柴谷篤弘 編: "日本の水生昆虫ー種分化とすみわけをめぐってー" 東海大学出版会, 1-184 (1989)