1989 Fiscal Year Annual Research Report
ヒヨドリバナ属における遺伝子重複とその系統学的意義
Project/Area Number |
63540546
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢原 徹一 東京大学, 理学部, 講師 (90158048)
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Keywords | ヒヨドリバナ属 / アイソザイム / 遺伝子重複 / 倍数体 |
Research Abstract |
ヒヨドリバナ属は北米東部と東アジアに隔離分布するキク科植物である。本属の2倍体種は10対の形態的に分化した体細胞染色体を持ち,細胞遺伝学的には2倍体と考えられる。10という半数体染色体数はキク科ヒヨドリバナ連の多くの属にみられ,ヒヨドリバナ連の染色体基本数と考えられてきた。ところが平成63年度までの研究において,本属の2倍体種が著しい遺伝子重複を持つことが示唆された。平成元年度は北米産の種で見出された遺伝子重複が東アジア産の種にも見出されるかどうかを調査し,遺伝子重複の一般性を確認した。また葉緑体アイソザイムと細胞質アイソザイムを分画し,遺伝子重複が局在部位の異なるアイソザイムの遺伝子の双方におきているかどうかも確認した。その結果は次のように要約される。ヒヨドリバナ属の2倍体種は北米産9種,東アジア産9種を通じて,アルコ-ル脱水素酵素,フルクト-ス1,6二リン酸アルドラ-ゼ,NADP依存イソクエン酸脱水素酵素,フォスフォグルコムタ-ゼ,フォスフォグルコ-スイソメラ-ゼ,6フォスフォグルコン酸脱水素酵素,シキミ酸脱水素酵素の計7酵素種について遺伝子重複に由来すると考えられるアイソザイムが発現されている。この結果にもとづいて,ヒヨドリバナ属は倍数体起原であり,染色体の形態の上では2倍体化が進行しているが,酵素遺伝子数の上では数多くの遺伝子重複を残した状態にあると考えられる。
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