1989 Fiscal Year Annual Research Report
組織適合性の壁を越えて遺伝的細胞マ-カ-を使う実験システムの確立
Project/Area Number |
63540556
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栃内 新 北海道大学, 理学部, 助教授 (20111148)
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Keywords | アフリカツメガエル / 純系 / 雑種 / キナクリン染色 / 細胞マ-カ- / 組織適合抗原 / 血液細胞 / 免疫寛容性 |
Research Abstract |
アフリカツメガエル純系J系統(Xenopus laevis,JJ)、およびJJ卵と近縁種(Xenopus borealis,BB)精子との媒精が得られた雑種(JB)とを用いて実験を行った。JB細胞はキナクリン染色することによりJJ細胞とはっきり区別されるマ-カ-を持っている。 JJ幼生にJB成体の皮膚を移植することにより、JB成体皮膚に対する免疫寛容性が誘導できた。変態後、その個体に皮膚を提供したものと同じJB個体から得られた末消血を注入した後、定期的に宿主末消血を採取し観察したところ、皮膚移植により寛容性を誘導していない個体では10日前後しか残存しないはずのJB赤血球が数ヶ月も存続することが観察され、この個体には血液細胞に対する寛容性も誘導されていることがわかった。また、JJ幼生にJB成体末消血を注入することによっても、JB血球に対してのみならず、末消血を供給した個体の皮膚に対しても寛容性が誘導されることが示された。ただしこの場合、幼生期に1度だけ血球を注入された個体では血球に対する寛容性は明らかに誘導されているにもかかわらず、皮膚に対しては弱い寛容性しか誘導されておらず、対照群に比べると長くかかるものの、移植された皮膚片は拒絶されてしまうことが多かった。しかし幼生期に3度にわたって血球を注入された個体ては、皮膚に対しても強い寛容性の誘導が確認され完全な生着が見られた。これらの結果は幼生期に成体の皮膚を移植することにより、ポリモルフィックではあるが同一の個体内ではどの組織にも普遍的に存在する主要組織適合抗原(クラスI)に対する免疫寛容性が比較的簡単に誘導されることを示すとともに、皮膚片や血液細胞にはそれぞれ独自の組織特異的な組織適合抗原が存在していることも示していると考えられる。 BBの純系を作出するための兄妹交配は順調に進んでいて、6世代目が育っている。
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[Publications] 大日向浩,栃内新,片桐千明: "Ontogeny of leukocytes derived from the blood islands during Xenopus development." Zoological Science. 6. 1139-1139 (1989)
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[Publications] 栃内新: "Presence of the thymus is requisite for the induction of transplantation tolerance by grafting metamorphosing Xenopus tadpoles with semixenogeneic adult skin." Zoological Sceince. 6. 1140-1140 (1989)
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[Publications] 大日向浩,栃内新,片桐千明: "Ontogeny and tissue distrikution of leukocyte-Common antigen bearing cells during early develolpment of Xenopus laevis" Differentiation. 107. 445-452 (1989)
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[Publications] 大日向浩,栃内新,片桐千明: "Occurrence of larval leukocytes that are not derived from blood island in Xenspus laevis" Developmental Biology. (1990)