1988 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛虫テトラヒメナの接合過程後期における大核分化の分子機構
Project/Area Number |
63540561
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沼田 治 筑波大学, 生物科学系, 講師 (50189354)
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Keywords | テトラヒメナ / 小核 / 大核 / 遺伝子再構成 / 中間繊維蛋白質 / 接合 |
Research Abstract |
テトラヒメナなどの繊毛虫は小核と大核の2種類の核を持つ。小核は2Cで生殖核として働き、大核は45Cで栄養核として遺伝子発現の場になっている。接合過程後期に受精核より小核と大核が分化する。この時、大核に分化する核ではDNA量の増加、全DNAの15〜20%の欠除、染色体の断片化、IgG遺伝子で見られるような遺伝子組み換えによる遺伝子再構成が起こる。我々は大核DNAの再構成の分子機構を明らかにすることを目的として、大核と小核の遺伝子の間でどのような遺伝子再構成があるかを検討し、さらに大核の遺伝子再構成に関与するDNA結合蛋白質の同定に着手した。今年度は、中間繊維蛋白質(49k蛋白質)、アクチン、カルモジュリンの遺伝子を大核と小核、それぞれからクローニングすることを試みた。これら3種類の遺伝子を大核の遺伝子からクローニングすることに成功し、現在塩基配列の決定を行っている。小核の遺伝子のクローニングはまだ成功しておらず、現在、小核のgenomic DNAライブラリーの作製に努力している。遺伝子再構成に関与するDNA結合蛋白質同定の第一歩として、蛍光抗体法によって大核を特異的に染色するモノクローナル抗体の作製を行った。その結果、大核を特異的に認識する4種類のモノクローナル抗体を取ることに成功した。11F11,11F9,11C10の3種類の抗体は核膜を強く染色し、小核は全く染色しない。11E11という抗体は分子量49,000の中間繊維蛋白質を認識しており、大核全体を染める。ホ乳類の中間繊維蛋白質ビメンチンはDNAと強く結合し、核内の骨格構造を形成していることが知られている。従って、テトラヒメナの中間繊維蛋白質(49k蛋白質)も大核DNAと相互作用している可能性が考えられる。現在、11E11抗体を用いて、大核分化過程における49k蛋白質とDNAの再構成の関係について研究を進めている。
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[Publications] 常本実,沼田治,菅井俊郎,渡辺良雄: Zoological Science. 5. 119-131 (1988)
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[Publications] 広野雅文,沼田治,熊谷泰子,渡辺良雄: Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86. 75-79 (1989)