1989 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物精漿中の鞭毛運動阻害蛋白を用いた鞭毛運動機構の研究
Project/Area Number |
63540567
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥野 誠 東京大学, 教養学部, 助教授 (40143325)
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Keywords | 哺乳動物精漿蛋白 / 鞭毛運動 / モデル精子 / 微小管 / 滑り運動 / ポリリジン / 顕微注射 |
Research Abstract |
ブタ精漿から調製した、鞭毛運動を阻害する哺乳動物精漿蛋白(以下精漿蛋白と略す)の鞭毛運動に対する作用の解析を、細胞膜除去したウニ精子モデルを用いて、前年度に引き続いて行なった。弱いトリプシン処理をほどこした精子モデルを用いた実験で、精漿蛋白は、ダブレット微小管の滑り出しは抑えるが、鞭毛先端でのほぐれは抑えないこと。またゆるやかな屈曲の弛緩も起こることが分かった。これらは、鞭毛軸糸内の粘弾性が非常に高まった結果であろう。また鞭毛運動の振動数や波形に帯する精漿蛋白の阻害効果を調べた前年度の研究成果と合わせると、ダブレット間の粘弾性が、鞭毛の振幅決定に深く関係していると考えられる。これは鞭毛運動制御機構を考える上での重要な知見である。 高分子である精漿蛋白の効果を考える上での一つのモデルとして、運動阻害作用の強いポリリジンを用いた定量的研究もさらに発展させた。比較的低濃度のポリリジンでは、鞭毛運動における振動数はほとんど変化しないが、振幅のみが最大1/3ほどに減少した。またATP欠如溶液で得られる屈曲した鞭毛を、ポリリジンで処理した後、ATPを加えると屈曲は弛緩した。これらの結果は、ポリリジンも精漿蛋白と同様にダブレット相互のずれに対する粘弾性抵抗として働いている事を示唆している。他の高分子を含めて、これらの作用機作を今後検討したい。 また、タコノマクラ受精卵を用いて、第一分裂後の胚の片側の細胞に精漿蛋白を顕微注射した。第二分裂期開始後に注射した場合、その核分裂も細胞質分裂もほぼ正常に進行した。しかしそれ以前に注入した場合、分裂期直前の核が多少変形し核膜消失に至るまでの時間が、延長するかもしくはそこで発生が停止する傾向がみられた。これは中心小体が分裂し移動する時期と考えられ、このような微小管依存性の運動になんらかの阻害作用を持つものかもしれないから、今後さらに詳しく調べたい。
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[Publications] Okuno,M.& Morisawa,M.: "Effects of calcium on motility of rainbow trout sperm flagella demembranated with Triton X-100." Cell Motility and Cytoskeleton. 14. 194-200 (1989)
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[Publications] Okuno,M.,Nakakuki,H.,Inaba,K.& Gagnon,C.: "Propagation of the pseudo rigor bend in the presence of a new dynein ATPase inhibitor." in preparation.
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[Publications] Iwamoto,T.,Dickson,J.,Lamirande,E.,Okuno,M.,Mohri,H.& Gagnon,C.: "Purification and characterization of a sperm motility inhibitor from seminal plasma." in preparation.
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[Publications] Okuno,M.: "Effects of poly amino acids on the demembranated flagellar movement" in preparation.