1988 Fiscal Year Annual Research Report
個体発生過程における昆虫視覚機能の発言とその可塑性に関する基礎的研究
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63540578
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
三村 珪一 長崎大学, 教養部, 教授 (20039754)
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Keywords | 高速液体クロマトグラフ法 / パターン弁別 / 昆虫 / 神経活動の可塑性 / カテコールアミン / 神経機能の発達 |
Research Abstract |
ハエの視覚パターン弁別機能の発達のためには、羽化直後の短時日の視覚経験が必要であることは、すでに行動実験や組織化学的実験から明らかになった。一方、光走性行動は羽化後の光経験はなくとも正常に認められる。このことは光走性機構は羽化時にすでに神経系に組み込まれているが、パターン弁別のような高度な視覚機構は羽化後の視覚刺激によって駆動されて初めて形成される後天的、獲得的な性質のものであることを示す。このよな羽化後の獲得的機構の形成は、視葉ニューロンの活動に伴うニューロン間のシナプス結合形成の可塑性に依存することを推測させる。この解明を分子レベルで追求する目的で、羽化後の光条件を変えて飼育したハエの視葉ニューロンの伝達物質を、高速液体クロマトグラフ法によって分離解析し、高度な視覚機能に関与するニューロン回路形成にかかわる特異的伝達物質を同定し、かつ羽化後早期のニューロン活動レベルとシナプス伝達の可塑性との関係を伝達物質の面から明らかにすることを試みた。昭和63年度はカテコールアミン類及びその代謝物質を、電気化学検出器を中心に分析した。その結果、少くも現在までに分析できた物質中には、脳中心部には存在しないか少なく、視葉に特異的又は多量にある数種の物質があることがわかり、そのうちいくつかの物質は、羽化後の光経験によって影響を受けることもわかった。それらの物質は羽化後の日数の経過とともに量的に変化し、羽化後4-5日で最大に達した後は変化しないもの、羽化後4日又は7〜10日まで増大するが以後減少するものがあり、視覚機能発達との相関をうかがわせた。しかし各種標準試料からのみでは、それら物質を同定することはできなかった。これらの同定を含め、電気化学検出器以外によらねば解析できない物質、飼育光条件の差によるそれら物質の変化等の解明が今後の課題である。
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[Publications] Mimura,K.: Brain Research. 445. 228-233 (1988)
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[Publications] Mimura,K.: Zoological Science. 5. 1206 (1988)