1988 Fiscal Year Annual Research Report
珪藻化石による日本海の誕生から成立期の古海洋・湖沼環境の復元
Project/Area Number |
63540633
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
谷村 好洋 国立科学博物館, 地学研究部, 研究官 (80141985)
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Keywords | 日本海 / 珪藻化石 / 成立史 / 古海洋・湖沼環境 |
Research Abstract |
新生代初期中新世、ユーラシア大陸の縁辺部に発達する湖沼群に、海洋底の拡大によって海水が浸入し、日本海が誕生するという日本海の成立史は、古地磁気学的・古生物地理学的調査により証明されつつある。 本研究は、日本海の古湖沼・古海洋像を、同海が形成される過程で堆積し、その過程をよく記録していると考えられる泥岩中の珪藻フローラの比較を通して明らかにすることを目的に進められている。同海の成立過程を、湖沼群が発達したと考えられる時期の淡水成珪藻土(湖沼期)、湖沼から海洋への漸移的な時期を代表する汽水成〜海成泥岩(漸移期)、そして日本海成立以降に堆積した海成珪藻質泥岩(海洋期) などを材料に、2年計画でフローラの解析が行われている。初年度にあたる本年度は、日本海中央部大和堆より得られたピストン・コアの下半部、北海道渡島半島虻羅層、佐渡杉野浦層、能登半島山戸田泥岩層、隠岐島後郡層などの珪藻フローラの解析を進めた。これらはいずれも、Aulacosira islandica(O.Mu^^‥ller)Simonsen, A. glanulata(Ehr.)SimonsenなどAulacosira属に含まれる淡水種の優占で特徴づけられ、同属に含まれる数種・変種の増殖に好適な湖沼が広く発達したことを示している。しかし、随伴種に関しては、個々のフローラごとにそれぞれ差異が認められ、より詳細な海洋像復元の手がかりとなると考えられる。なかでも、現在の湖沼の性質とその珪藻フローラとの対応関係を化石フローラに適用する作業は重要である。次年度は、漸移期と海洋期を代表するフローラの解析を中心に研究を進め、同海成立前後の海洋像復元を行なう。なお、海洋像復元に不可欠な汽水・海水、沿岸・外洋、暖海(流)・寒海(流)などの指標種を抽出するため、今年度は上記フローラの解析とともに、日本海に流入する起源水である黒潮系水中でのセジメント・トラップ試料の解析も行ない、黒潮系沿岸水と太平洋中央水の消長推定に有効な数種を抽出した。
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