1989 Fiscal Year Annual Research Report
硬質アモルファス炭素膜の極低摩擦現象およびその表面吸着条件
Project/Area Number |
63550105
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井手 敞 愛媛大学, 工学部, 助教授 (20029276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 洋通 愛媛大学, 工学部, 助手 (00217572)
八木 秀次 愛媛大学, 工学部, 助教授 (40036471)
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Keywords | アモルファス炭素膜 / 境界潤滑 / ガス分子吸着 / 極低摩擦 / 構造暖和 / 局在準位密度 / 表面官能基 / カ-ボンブラック |
Research Abstract |
硬質アモルファス炭素膜が極低摩擦を示すときの表面吸着状態を明確にするため、膜表面構造因子の影響に着目した実験を実施した。 1.タングステンチップの接触・走査における縮流抵抗の測定より炭素膜表面構造の均質性を評価した。その結果、グラファイト的構造の網状経路を電流が流れる、いわゆるパ-コレ-ション型伝導を示し、その不均質さは平均的に約15μmの間隔で存在することがわかった。この結果は、本炭素膜にはカ-ボンブラックのグラファイト的構造とそれの被衝撃物質であるアモルファス構造とを混在することを示し、またこのことをラマン分光によって実証した。さらに、加熱処理に伴うアモルファス構造の暖和は、局在準位密度の変化から推定して、膜構造の不均質性にも係わらず一様に進行することがわかった。 2.水分子吸着の影響が大きい大気中において、これまでとは膜質の異なる炭素膜を使った同一軌道上繰り返し摩擦実験を実施し、境界潤滑特性の違いを調べた。その結果、1)親水性官能基およびグラファイト含有率の高い炭素膜ほど摩擦係数の定常値が高くなり、分子被覆率の低い吸着状態での吸着速度が高いことがわかった。2)従来の知見と総合して、高潤滑性能は希薄な分子吸着状態下で達成され、その状態は摩擦条件で規定される脱離速度と、膜質および環境条件で規定される吸着速度との平衡によって成り立つことが明白になった。3)含酸素官能基を含有する膜では真空中での摩耗の進行が著しく、前年度の酸素雰囲気中での挙動との間の対応が推察された。
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