1988 Fiscal Year Annual Research Report
LEO(地球低軌道)における層状固体潤滑剤のトライボロジ特性
Project/Area Number |
63550120
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 大阪大学, 工学部, 講師 (60029345)
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Keywords | 原子状酸素 / スペーストライボロジ / 層状固体潤滑剤 / 基底面の原子構造 |
Research Abstract |
LEO(地球低軌道)に存在する原子状酸素が宇宙航空機器のトライボロジ特性に及ぼす影響を研究するために、クラウンドベースでの原子状酸素発生装置を製作した。この原子状酸素発生装置は1〜10^<-1>Paの酸素グロー放電中から原子状酸素を取り出す方式であり、そのエネルギーを5eV、すなわちLEOにおける構造物の平均速度8km/sにすることができた。また、本シングルグリッド型原子状酸素発生装置のフラックスは10^<14>atoms/m^2s以上を得ることができる。二硫化モリブデン(MoS_2)をコーティングしたディスクとステンレス鋼のビンを用いて10^<-5>Paの真空中で摩擦実験を行い、摩擦力及び垂直力を100μs間隔で計測した。原子状酸素に曝露されたMoS_2は0.11という大きな摩擦係数を示すが、数回転後からは0.06の一定値となった。原子状酸素を曝露していないMoS_2の真空中での摩擦係数が0.06であるので、MoS_2表面層は原子状酸素によって著しく破壊されていることが明白で、宇宙機器のトライボロジ特性に重大な影響を及ぼすことが判る。LEOでは常時原子状酸素に曝されるのでMoS_2をコーティングした表面は起動時に大きな摩擦トルクを必要とすることになり、そのトライボロジ特性が危惧される。グラファイトに関しては原子状酸素が層間に侵入し、真空中でも摩擦を低減する傾向を認め、この原因を解析するためにオージェ電子分光及び電界イオン顕微鏡を用いてグラファイトの原子構造に関する研究を行った。その結果、基底面間に多量の酸素が侵入すること、基底面上には酸素が吸着しにくいこと、基底面の構造が露出の前後で激変することを確認した。本研究の結果を総括すると、原子状酸素の問題はスペーストライボロジにおいて最もシリアスであり、代表的な層状固体潤滑剤であるMoS_2の特性を低下させることから、さらに実験的検討と原子状酸素のアタックに耐える固体潤滑剤の開発が急務である。
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[Publications] Ohmae,N.: Tribology Transactions. 31. 481-488 (1988)
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[Publications] 大前伸夫: 潤滑. 33. 608-611 (1988)
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[Publications] 大前伸夫: 表面科学. 9. 734-739 (1988)
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[Publications] 大前伸夫: 材料. 37. 978-979 (1988)
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[Publications] Tagawa,M.: Proceedings of the Materials Research Society,1988 Fall Meeting,Boston,MA,Graphite Intercalation Compounds:Science and Applications. 161-164 (1988)
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[Publications] Tagawa,M.: Proceedings of the Second Topical Meeting on Crystal Growth Mechanism,. 79-82 (1989)
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[Publications] 田川雅人: 第36回応用物理学関係連合講演会. (1989)
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[Publications] 大前伸夫: 日本潤滑学会第33期春季研究発表会. (1989)