1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63550269
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 馨 東京大学, 工学部, 助教授 (30010953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 豊 東京大学, 工学部, 助手 (40205737)
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Keywords | 神経回路モデル / 自己組織化 / 世界像 / 連想記憶 / 認識系 / 記憶系 / 合目的的行動形成 |
Research Abstract |
人間は、脳内に外界の事物や事象のモデルともいうべき"世界像"を形成することによって、高度な思考を行い、合目的的な行動をすることができる。この研究は、脳のこのような機能を実現する神経回路モデルを構成することを目指している。 しかし、脳は受容器(目、耳、皮膚など)や効果器(手、足など)と一体になって動作して初めてその機能を発揮するため、記憶や思考単体のモデルのみを扱っていては目的を達することができない。そこで本研究では、センサとアクチュエータを備えた簡単なロボットを対象として、認識・記憶・行動系が外界との間でループを形作るようなシステムを構成した。そして、神経回路モデルを用いて合目的的行動パターンを自己形成させることを試みた。 具体的には、まず視覚センサ・聴覚センサ・接触センサなどを通じて外界を観測し、簡単な動作の組合せによって外界に働きかけるロボットを試作した。次いでロボットの行動の場に複数個のターゲットを用意し、ターゲットの種類に応じてロボットに行動目標を与えた。ロボットは、外界に働きかけながらその結果を観測し、記憶することによって知識を蓄えていき、外界の写像ともいうべき世界像を形成する。そうしたうえで、このシステムが試行錯誤的に動作しながら次第に合目的的な行動パターンをとることができるよう、検討・改善を重ねつつモデルを構成した。 このモデルは簡略化されてはいるが、脳の情報処理機構の重要な部分を捉えたものになっている。また、これにより、脳が持つ高度な知的機能の一面を実現できたといえる。この研究の成果は、今後の脳の工学的研究に役立つものと思われる。
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[Publications] K.Nakano: Biological Cybernetics. Vol.58. 417-425 (1988)
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[Publications] K.Nakano: Biological Cybernetics. Vol.60. 195-202 (1989)
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[Publications] Y.Sakaguchi: Proc.27th SICE Annual Conference. ESS2-2. 1057-1060 (1988)
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[Publications] 森田昌彦: 電子情報通信学会論文誌D-II. J72. 279-288 (1989)