1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63550488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
月橋 文孝 東京大学, 工学部, 助教授 (60155348)
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Keywords | スラグ / フラックス / 窒素溶解度 / ナイトライドイオン / 熱力学 / シリケート / 窒素 |
Research Abstract |
本研究ではフラックス融体中の窒素の物理化学的性質を知るために、製鉄用に用いられる塩基性フラックスから、ガラスに用いられる酸性の領域までの広い組成範囲にわたって、各種フラックス中への窒素の溶解度を調べた。昭和63年度はCaO-CaF_2-SiO_2、CaO-CaF_2、およびCaO-SiO_2系フラックス中への窒素の溶解度を化学平衡法により測定した。すなわち所定組成のフラックスをるつぼに入れ、所定温度で、N_2、Ar、CO分圧を制御したガスと平衡させた後、フラックス中の窒素分析を行った。窒素溶解度に及ぼすフラックスの組成依存性、酸素分圧、窒素分圧依存性、温度依存性を調べ、以下の知見を得た。 1.CaO-CaF_2系フラックス中への窒素の溶解度は、1375℃で酸素分圧が10^<-6>atmから10^<-11>atmまでは一定で、それ以下ではN^<3->として溶解した。窒素分圧依存性の結果より、N^<3->、CN^-イオンとしての窒素の溶解反応は1/2N_2+3/2O^<2->+3/2C=N^<3->+3/2CO、1/2N_2+1/2O^<2->+3/2C=CN^-+1/2COで表された。 2.CaO-SiO_2系フラックス中への窒素の溶解度を測定し、その溶解機構として、フラックスの塩基度の高い場合、フリーナイトライドイオンとして、塩基度の低い場合にはシリケートと結合したナイトライドイオンとして溶解することが明らかとなった。また両イオンの溶解度は、上記の溶解反応から予想される窒素分圧依存性を示した。 3.CaO-CaF_2-SiO_2系フラックス中への窒素の溶解度は、1300℃の液相線上で測定し、SiO_2飽和組成からCaOが増加するに従い窒素溶解度は減少し、3CaO・2SiO_2組成で極小となる。さらに3CaO・SiO_2、2CaO・SiO_2両相飽和組成で最大となり、さらにCaOが増加すると窒素溶解度は減少した。またCaF_2の添加によりフッ素イオンが増加し、このことは、シリカネットワーク中の窒素と置換し、フリーナイトライドイオンを生じさせる役割をしていることがわかった。
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