1989 Fiscal Year Annual Research Report
熱処理によるセラミックス・金属接合層の改質と強度の向上に関する研究
Project/Area Number |
63550515
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
成田 敏夫 北海道大学, 工学部, 助教授 (60001252)
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Keywords | セラミックス・金属接合体 / 残留熱応力 / 超音波顕微鏡 / 表面弾性波 / 残留応力と外力の相互作用 / 窒化ケイ素セラミックス / ジルコニアセラミックス / 高温酸化 |
Research Abstract |
高強度で信頼性に優れた窒化ケイ素セラミックスとステンレス鋼接合体を作製するため、前年度ではセラミックスおよび応力緩衝金属との濡れ・接合性が良好である新しいろう材を開発した。本年度は接合体の残留熱応力の測定法の研究と接合対を実際に高温・腐食環境で使用するための基礎的研究を行った。得られた成果は以下のように纏められる。 (1)超音波を金属と接合したセラミックス表面に照射すると、特定の角度で入射した音波は表面弾性波となる。この表面弾性波はセラミックスの応力状態に依存して変化する。即ち、圧縮応力状態では音速は増大し、引張応力では低下する。この原理を応用して、超音波顕微鏡による残留応力の測定法を世界で最初に提案した。 (2)窒化ケイ素セラミックスとステンレス鋼との接合体の強度は、Ni中間材厚さに対して凸形の分布を示す。これはセラミックスの残留熱応力の分布と大きさに依存する。本研究で提案した超音波顕微鏡を用いる残留熱応力の測定は、界面から離れた領域では理論とほぼ一致したが、約1mm以内の界面近傍ては、実測、理論、他の研究者よるXー線解析による結果、のいずれもが互いに異なる結果になることが明らかとなった。学会でも、我々の発表に対して多くの関心と質問があり、今後の重要な研究課題であることが認識された。 (3)ジルコニアセラミックスと金属接合対では、小型の試験機を超音波顕微鏡に設置し、接合時の残留応力とともに、外力を付加した状態での応力分布を測定した。なお、接合時に観察された応力は、破断したセラミックスには認められない、即ち、破断によって残留応力が解放されたことが証明された。 (4)室温で220-240MPaであった接合対の破断強度は、試験温度が上昇するにつれて、増大し、400℃で最高強度280-300MPaになり、その後、徐々に低下した。しかし、実用温度とされる800℃で180-200MPaの強度が得られた。なお、800℃では中間材のNiが塑性変形したが、接合部は健全であった。 (5)接合対を空気中、800℃までの各温度で酸化した結果、接合部は健全であったが、中間材のWが600℃以上で急速に酸化による劣化をうける事が明らかとなった。今後、耐熱・耐腐食性に優れた中間材の開発が必要である。
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[Publications] 成田敏夫,三枝利紀,石川達雄: "酸化クロム処理による安定化ジルコニア・金属接合体の強度の向上" 日本金属学会誌. 54. 244-245 (1990)
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[Publications] 成田敏夫,石川潔: "超音波顕微鏡によるセラミックス・金属接合体の評価" バウンダリ-. 5. 32-35 (1989)
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[Publications] 高島敏行,山本強,成田敏夫: "窒化ケイ素セラミックスとNiとの反応" 日本セラミックス協会学術論文誌. 98. 36-42 (1990)
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[Publications] 成田敏夫,三枝利紀,石川達雄: "Ag-Cu-TiろうとNi中間材による安定化ジルコニアセラミックスと金属との接合" 日本金属学会誌. 54. (1990)