1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63550539
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小野 文久 岡山大学, 教養部, 教授 (00005406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 裕司 日本原子力研究所, 物理部, 室長
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Keywords | 磁気異方性 / 強磁性金属合金 / 格子欠陥と磁性の関係 / 格子間原子 |
Research Abstract |
原子炉や核融合炉の炉壁材料は、中性子線や原子などの高速粒子線の衝突を受けるが、そのときの照射損傷が材料の物性に及ぼす影響が炉の耐久性などに関して重要な問題となっている。金属合金中の照射損傷の重要な要素として、格子間原子および原子空孔があるが、比較的低温で移動可能となる格子間原子の性質を理解することがまず必要である。 格子間原子はその周囲から高い圧力を受けている状態と同様と考えられるので、このような状態におけるFeを中心とした遷移金属についてdーバンドの強磁性スピン分裂を考慮してモデルdーバンドおよびLMTO法による理論計算を行い、格子間原子のエネルギ-的安定性および熱的性質を調べた。その結果、格子間Fe原子は他の原子と比べて、その磁気モ-メントを失うことによりむしろエネルギ-的に準安定な状態をとり得ることが示された。この結果を用いてこれまでに得られた磁気異方性の測定などの実験結果の考察を行った。 Fe中の格子間原子は磁気異方性の測定から110ーダンベル構造の対称性をとることが示されたが、格子間原子による磁気トルクの大きさはNiと比べて小さいことがわかった。また磁壁移動の観察から欠陥形成の初期に磁壁は移動しやすくなるが、この効果はNiよりFeの方が小さいこともわかった。さらにFeーNiインバ-合金の高圧下の磁化測定によれば、低温においても磁化は圧力の増加とともに非常に大きく減少することがわかった。このことからfcc Feの磁気モ-メントが、高い圧力を受けているのと同様な格子間原子の状態で小さくなることも示された。これらの結果は強磁性バンド理論によって良く説明される。同じモデルでさらにFe中の格子間原子の移動温度が他の金属と比べて高いことや、欠陥生成のエネルギ-しきい値がちいさいことなども統一的に説明できる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] F.Ono,Lu Bang: "Magnetization Process and Torque Curves in hcp Cobalt" IEEE Transactions on Magnetics. 26. 2058-2060 (1990)
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[Publications] F.Ono,M.Asano,R.Tanaka,S.Endo: "Magnetization Measurements in an Invar Alloy Under High Pressure" Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 90&91. 737-739 (1990)
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[Publications] 小野 文久: "磁性材料中の格子欠陥と磁壁の相互作用の研究" 山陽放送学術文化財団レポ-ト. 34. 40-46 (1990)
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[Publications] R.Tanaka,S.Nakamichi,S.Endo,H.Wada,M.Shiga,F.Ono: "Pressure Induced Ferromagnetism in TbMn_2" Solid State Communications. (1991)
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[Publications] F.Ono,H.Maeta: "Magnetism of Interstitial Atoms in Transition and Rareーearth Metals" IEEE Translation Journal on Magnetics in Japan. (1991)