1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63550630
|
Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 佳久 姫路工業大学, 工学基礎研究所, 助教授 (30112543)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 晰 姫路工業大学, 工学基礎研究所, 教授 (20029961)
|
Keywords | 不斉反応 / 光化学反応 / 光増感反応 / 不斉増殖 / シクロオクテン / 芳香族カルボン酸エステル |
Research Abstract |
従来、液相光化学反応により不斉誘導を行おうとする試みは2、3の反応系で行われていたが、光学収率の点では必ずしも成功しているとは言い難い(最高でも7%ee)。その原因は、一般の三重項光増感反応においては、エネルギー移動が電子交換機構で起こるため、励起状態にある増感剤と基質との接触時間が余りに短く、また両者の空間的距離も遠過ぎるからであると推察された。そこで本研究では、新たに見いだした芳香族エステルによるオレフィン類の励起錯体(エキサイプレックス)を経る一重項増感光異性化反応を用い、エステルのアルコール部分に種々の天然および合成不斉中心を導入することにより、高効率不斉誘導反応を開発した。 本研究では、まず光増感剤の一重項エネルギーと光学収率の関係を実験的ならびに理論的に明らかにし、次にエステルのアルコール残基の構造と光学収率の関係についても実験的ならびに理論的に明らかにした。それらの結果を総合的に考慮した光増感剤の分子設計を行い、両者を最適化させた系、つまり、ピロメリット酸ボルニルを用いたシクロオクテンの低温不斉光異性化反応において、従来の最高値である7%eeを大きく上回る40%eeという増感光異性化反応としては極めて高い光学収率を得た。このことは、光増感反応により不斉増殖を実現することが可能であることを初めて明らかにしたものであり、光化学的にも合成化学的にもきわめて重要な成果である。これらの成果は、分子力場や分子軌道計算を積極的に取り入れ、得られた立体構造と電子状態に関する情報を活用して、光増感剤の高精度分子設計を行うことにより初めて可能となった。今後、本研究で得られた研究成果と方法論を指針とすることにより、さらに高い光学収率を得ることも可能であると考えられ、現在他の反応系にも研究を展開しつつある。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Y.Inoue;N.Yamasaki;T.Yokoyama;A.Tai;A.Ishida;S.Takamuku: J.Chem.Soc.,Chem.Commun.
-
[Publications] Y.Inoue;T.Yokoyama;N.Yamasaki;A.Tai: J.Am.Chem.Soc.