イオン性高分子ゲルの分離機能に関する速度論的研究

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 63550705
• Research Institution: Shizuoka University
• Principal Investigator: 中野 義夫 静岡大学, 工学部, 教授 (30092563)
• Keywords: イオン性高分子ゲル / 官能基 / 膨潤収縮現象 / 高分子鎖の拡散係数 / 電解質水溶液

Research Abstract

本研究では、官能基として(1)アクリル酸、アクリル酸ナトリウム(2)トリメチル-N-アクリロイル-3-アミノプロピルアンモニウムクロライドを用いたアクリルアミド系のゲル((1)はアニオンゲル;(2)はカチオンゲル;(1)+(2)は両性ゲル) を合成した。このイオン性高分子ゲルについて、水-アセトン水溶液および電解質水溶液中におけるゲルの膨潤収縮特性を明らかにした。
1.水-アセトン水溶液中におけるアニオン、カチオンおよび両性ゲルの膨潤収縮特性(相転移現象および臨界現象)を実験面より明らかにし、この水溶液系における各種ゲルの相図を作成した。さらに、ゲル固有の相転移現象が起こるアセトン濃度近傍での濃度スイング実験より、高分子鎖(ネットワーク)の拡散係数Dを求め、有効ポリマー鎖一本当りの対イオン数fとの間にD=exp(αf+β)が成立することを指摘した。ここで、αとβは定数である。
2.電解質水溶液中におけるアニオン、カチオン、両性ゲルの膨潤収縮現象は、ゲル中に存在するイオン種(可動イオン)とゲル外に存在するイオン種(可動イオン)間のイオン交換反応に依存していることを指摘した。アニオンゲルの場合にはゲル内の陽イオンが、一方、カチオンゲルの場合には陰イオンが互いにイオン交換する。この際、ゲル内外の交換イオンの価数が共に1価の場合には、ゲルの膨潤収縮の程度はイオン交換前後においてほぼ同じである。ところが、ゲル内のイオンの価数が1価、ゲル内のイオンの価数が2価の場合には、イオン交換後におけるゲルの膨潤の度合はほぼ半減することが分かった。現在、電解質水溶液中における可動イオンとゲル内の可動イオン間に生じるドナン平衡およびドナン電位を考慮したモデル解析を行い、その確認を進めている。

Research Products

• [Publications] 中野義夫: 高分子学会予稿集. 37. 3088-3090 (1988)
• [Publications] 中野義夫: 第54年会研究発表講演要旨集 (化学工学協会). (1989)
• [Publications] 中野義夫: "化学工学の進歩22 反応工学 (化学工学協会編)" 〓書店, 35-61 (1988)