1989 Fiscal Year Annual Research Report
コムギ族遠緑間雑種植物の染色体安定行動に関する育種学的研究
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63560005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村松 幹夫 岡山大学, 農学部, 教授 (40033162)
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Keywords | 遠緑交雑 / カモジグサ属 / オオムギ属 / 胚培養 / 二染色体添加系統 / 染色体不安定性 / 雑種弱勢 / 遅延染色体 |
Research Abstract |
コムギ族の属のうちカモジグサ属の日本産の4種、A.ciliare,A.tashiroi,A.tsukushiense,A.humidorumを中心として同一族内他属のコムギ属、エゾムギ属、オオムギ属、ハイナルデイア属およびAegilops属の各種との間に、すでに3万小花近くの交配を行ない、雑種種子の胚培養によって、種々の組合せの遠緑雑種を得ている。本年度は、これら交雑親の種や同一種について、異なる産地の系統の収集を行い、同一組合せに交配親系統間の遺伝的差異を識る材料とした。また、コムギへのオオムギ染色体の二染色体添加系統を米国から導入栽培し、カモジグサとの交配による雑種育成を行った。このような実験の結果、年度内に得られた結果の概要し、カモジグサ、アオカモジグサの両種はともにオオムギとの交雑において著るしい染色体不安定性を示し、体細胞と花粉母細胞の両者において細胞当りの染色体数が大きく変動する。この変動は比較的発生初期から分げつ期を経て成熟分裂機まで種々の時期に生じるが、もし発生初期に生じると小型の植物となる。アオカモジグサを用いた組合せでは、とくに小型の植物となるが、原因が染色体異常によるほか、雑種弱勢を生じる遺伝子のためとも考えられる。オオムギ親にH.irregulareを用いた雑種は比較的大きいが、やはり染色体変異を生じる。オオムギ染色体添加コムギとカモジグサとの雑種はオオムギの3種の染色体について得られたが、何れも正常型植物を生じた。新しい採集したE.ncollis(ハマニンニク、エゾムギ属)とカモジグサやコムギとのF_1はどれも正常となったが、オオムギとの組合せは極小型のまま生育を停止した。コムギとアオカモジグサとのF_1は正常型であるがコムギによる戻交雑子孫には、花粉母細胞で細胞間に染色体数の変異を示す系統が出現した。カモジグサとオオムギのF_1について行った細胞組織学的観察では細胞分裂後期の染色体分離が正常であったが、押しつよく標本では、分離後期に遅延染色体がみられた。
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