1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63560019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
筒井 澄 北海道大学, 農学部, 教授 (90155416)
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Keywords | ラン・菌共生 / 栄養 / 寄生性 / 菌株間差違 / ネジバナ / コクラン |
Research Abstract |
1.ラン・菌共生関係成立における培地養分量 (1)ネジバナおよびコクランとこれらに有効な共生リゾクトニア菌を用いたin vitro培養において、天然の培地栄養源では、エンバクなど麦類穀粒粉がすぐれた。エンバク培地における実生の生育に及ぼす個体密度の影響は、一定の範囲まで培地養分濃度とは無関係に、個体当りの養分量に依存した。しかし、この範囲を越えると、実生の生育は著しく抑制された。(2)このような高栄養条件下における実生プロトコームの組織観察により、プロトコーム内の菌侵入部分の著しい増大がみられ、菌の寄生性の増大が生育抑制の原因であることを示した。(3)この生育抑制の始まる養分濃度や抑制の程度には、ラン・菌組合わせによって大きな差がみられた。同一種のランでも菌株により大きな差がみられたので、この差は用いる菌の寄生性の差違によるところが大であると考えられた。 2.ラン・菌共生関係成立に関与する栄養要素 (1)エンバクを溶解性によって順次分画し、各画分の培地への添加効果を比較検討した。その結果アルコール可溶画分および熱水可溶画分は効果に関与せず、冷水可溶画分と熱水不溶画分の同時添加が必要であり、それぞれ単独では効果はなかった。各画分の無機成分分析と、無機塩添加実験の結果から、冷水可溶画分中の有効成分は、窒素を除く多量無機要素であることを明らかにした。熱水不溶画分中の有効成分は、多量に含まれる不溶性窒素と不溶性多糖類であると考えられた。(2)熱水不溶画分をアミラーゼにより脱デンプンしたもの、さらに脱リグニンしたホロセルローズを等量添加した培地間で比較すると、脱デンプン区において著しい生育抑制と褐変がみられた。脱デンプンによって不溶性窒素は失われず、その量が著しく多かったことは、高養分濃度による寄生性の増大には、主として不溶性窒素濃度の増大が関与することを示唆した。
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