1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63560039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 幸男 東京大学, 農学部, 助手 (60125987)
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Keywords | 昆虫 / タマネギバエ / 植物2次物質 / 解毒機構 / グルタチオンS-トランスフェラーゼ / 精製 |
Research Abstract |
植物2次物質の解毒酵素として重要であると考えられるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)をタマネギバエHylemya antigue Meigenより精製し、その生化学的な性状を調べた。また、GSTは解毒作用以外にも多くの機能を持つことが知られ、ラットなど複数のアイソザイムを持つものではアイソザイム間に機能の分化が認められている。しかし、後述のようにタマネギバエではGSTは単一の分子種からなる事が明らかとなったもので、この一種のタンパクが他の動物で知られているGSTの持つ多様な機能をすべて持っているのか調査した。結果の概要は次の通りである。 1.硫安分画、DEAEセルロースクロマトグラフィー、GSH-Sepharoseカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーでGSTを精製した。等電点で電気泳動、disc-POGE、SDS-PAGEにより、タマネギバエGSTを単一にまで精製したことを確認した。このGSTは分子量約23,500のサブユニットから成る分子量約50,000ホモダイマーであり、等電点は5.0であった。GSH、CDNBに対するKm価は、それぞれ0.92±0.60mM、0.027±0.006mMである。また、GSTの触媒機構はseguential mechanismであり、ping-pong mechanismではないことが酵素反応速度論的解析により分かった。 2.GSTの解毒作用以外の機能として、ビリルビン結合機能、ヘマチン結合機能、有機過酸化物を基質とするグルタチオンペルオキシターゼ活性について調べた。ビリルビンはCDNBに対しては競合阻害、GSHに対しては非競合阻害を示し、ヘマチンはCDNBに対しては非競合阻害を示した。また、有機過酸化物を基質とするグルタチオンペルオキシターゼ活性も認められた。したがって、タマネギバエGSTは、一つの分子種でGSTの持つ多様な機能をすべて持っている可能性が示唆された。
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