1989 Fiscal Year Annual Research Report
植物の重金属誘導ペプチド,ファイトケラチンの生物学的機能と生合成機構
Project/Area Number |
63560060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 悦郎 東京大学, 農学部, 助手 (10130303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 典明 東京大学, 農学部, 助手 (20172976)
大久保 明 東京大学, 農学部, 助手 (20111479)
山崎 素直 東京大学, 農学部, 助教授 (00011982)
戸田 昭三 東京大学, 農学部, 教授 (40011845)
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Keywords | 植物 / 重金属誘導ペプチド / 重金属耐性 / ファイトケラチン |
Research Abstract |
1.ファイトケラチン(以下PC)による重金属解毒機構 ブチオニンスルホキシミン(BSX)はγ-グルタミルシスティン合成の阻害剤である。これをCdと共に水耕液中に加え,トウモロコシの栽培を行った。Cd,BSXのそれぞれ単独の場合には対照区と同様に正常な成育を示したのに対して,両者を含む場合には著しい生育阻害が認められた。これらの根からPCをTris/HCl緩衝液で抽出し,HPLCで分析を行った。Cdだけの添加ではかなりの量のPCが認められたのに対し,CdとBSXを含む場合にはPCの量は極めて少ないものであった。また,根のCd濃度はCd添加区とCd,BSXの添加区ではほぼ同一の値となっていたが,茎ならびに葉ではCd,BSXの添加区ではCd添加区に比べてそれぞれ4分の1ならびに8分の1となっていた。すなわち,Cd添加により生じたPCはCdと水溶性のCd結合物質をつくり,これが茎や葉に移動するものと考えられる。一方,BSXを共存させPCの合成を阻害すると,根に入ったPCは主としてタンパク質分子のSH基と結合し,根にとどまるものと考えられる。そしてこれはタンパク質の構造と機能を変化させ,毒性を呈するものと推定される。これらのことから,PCはCdの毒性緩和に深く関与していることならびにPCの合成がγ-グルタミルシステインあるいはグルタチオンを基質としていることが推定された。 2.PC合成酵素の探索 トウモロコシの根の抽出液にγ-グルタミルシステインならびにグルタチオンを加えてin vitroのPC合成能を探索した。種々の条件において検討を重ねたが,明確なPC合成能は検出できなかった。一方,精製したPCを根の抽出溶液に加えるとPCの減衰が観測された。従って,PCの分解活性との分離が今後の検討課題になるものと考えられる。
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