1988 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール要求性変異株を用いた生体膜機能の解明
Project/Area Number |
63560074
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
松崎 博 埼玉大学, 理学部, 助手 (80008870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 明徳 埼玉大学, 理学部, 助教授 (30125885)
渋谷 勲 埼玉大学, 理学部, 教授 (60013306)
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / ミオ-イノシトール / 動物培養細胞 / リン脂質 / 細胞増殖 / 突然変異株 / 培養癌細胞 / 生体膜 |
Research Abstract |
生体膜のリン脂質ホスファチジルイノシトール(PI)およびその代謝産物が動物細胞増殖を制御するシグナル伝達に関わる役割を明らかにするために、全生物で初めて分離されたマウス自然発生乳癌由来FM3A細胞F28-7株より増殖にPIを要求する変異株の変異点の解析、および親株および変異株を用いて、細胞増殖におけるミオ-イノシトール(Ins)およびPIの役割について解析を行った。 親株では正常な細胞増殖に10μM以上のInsの存在が必要であるが、PIを添加すると、細胞増殖、PI合成酵素活性は変わらないが、Insの細胞脂質画分への取り込みが増大した。またリン脂質組成はPI無添加時に比べ、ホスファチジルグリセロール(PG)含量が低下していた。寒天培養で脱脂牛胎児血清添加、Ins存在下で細胞増殖にPIの要求性を示す変異株のうち1株(6-2-III)では細胞リン脂質組成および合成速度、また代謝回転は、親株と著しい差異はなかったが、細胞並びにその脂質画分へのInsの取り込みが、それぞれ親株の約40%、60-70%に低下していたが、細胞破砕液のPI合成酵素活性は親株より低下していなかった。さらに、この変異株の世代時間が1.5-2倍と親株より細胞増殖速度が低下し、増殖形態も凝集が減少するなどの異常が認められた。一方、別の変異株(17-6-I)では液体、寒天培養共、Insの代わりにPIのみの添加で同様に増殖する傾向を示した。またPI添加の有無に関わらず、リン脂質組成に著しい変化はなく、親株に比べ、PGは低含量であった。これらの細胞において、InsおよびPIの細胞増殖並びにPI代謝との関わりはPI代謝回転だけでなく、代謝基質の取り込みから生体膜アセンブリー機能発見に至るまでの複雑な制御によることが推察され、一部明らかにされた親株でのPIおよびInsの増殖に対する効果、PI要求性変異株の性質は、生体膜機能発現におけるIns並びにPIの役割を解明する重要な手掛かりと考えられる。
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[Publications] 下川敏文、渋谷勲、松崎博: 生化学. 60. 966 (1988)
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[Publications] 松崎博: 蛋白質核酸酵素. 33. 82-83 (1988)
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[Publications] H.Matsuzaki・I.Shibuya et al: J.Cell.Physiol.投稿準備中.
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[Publications] S.Nishijima・A.Ohta・I.Shibuya et al.: J.Bacteriol.170. 775-780 (1988)
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[Publications] T.Hikji・I.Shibuya・A.Ohta et al.: J.Biochem.104. 894-900 (1988)
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[Publications] 下川敏文、渋谷勲、松崎博等: 日本農芸化学会誌. 63. 634 (1989)