1988 Fiscal Year Annual Research Report
必須脂肪酸代謝におけるγ-リノレン酸の生理的意義の解明
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63560076
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
五十嵐 脩 お茶の水女子大学, 生活環境研究センター, 教授 (40017231)
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Keywords | γ-リノレン酸 / アラキドン酸 / 必須脂肪酸代謝 / ジホモ-γ-リノレン酸 / 初代培養肝細胞 / HepG2 |
Research Abstract |
γ-リノレン酸はn-6系列の必須脂肪酸であり、生体内ではリノール酸からアラキドン酸への中間代謝物である。このγ-リノレン酸のラット肝初代培養細胞、ヒト肝ガン由来のHepG2細胞系での取り込み、代謝をn-6系列の必須脂肪酸であるリノール酸、ジホモ-γ-リノレン酸、n-3系列のγ-リノレン酸と比較すると共に、これらの必須脂肪酸の取り込み、代謝上での相互作用について検討した。まず、ラット肝細胞、HepG2細胞共に、これらの脂肪酸の取り込み量はリノール酸が最も大きく、次いでγ-リノレン酸であり、γ-リノレン酸からC2が結合してC20となったジホモ-γ-リノレン酸の取り込み量はα-リノレン酸とほぼ同じ程度で近かった。また、これらの脂肪酸の代謝物は、γ-リノレン酸からはその添加濃度、時間に応じてジホモ-γ-リノレン酸の顕著な生成が見られた。しかし、両細胞系そにアラキドン酸量には変化は観察されなかった。また、α-リノレン酸添加時には、HepG2細胞においてのみC20:4(n-3)の生成が微量であるが観察された。この結果、両細胞系においてγ-リノレン酸を倍地に添加した際、細胞内のジホモ-γ-リノレン酸(C20:3、n-6)/アラキドン酸(C20:4、n-6)比は大きく変化し、その変化はHepG2でより大きく、対照の細胞に比べて約20倍に達した。次に、これらの脂肪酸または代謝物のリン脂質画分への取り組みを観察した結果、γ-リノレン酸及びその代謝物であるジホモ-γ-リノレン酸はホスファチジル-コリン、-エタノールアミン、-イノントールの各画分に取り込まれていた。このことは、γ-リノレン酸由来のジホモ-γ-リノレン酸がプロスグランジン及びロイコトリエンの前駆体として機能することを示唆するものである。なお、γ-リノレン酸とα-リノレン酸は両細胞系において代謝上拮抗作用をもつことが確かめられた。このことはn-6、n-3系列の必須脂肪酸の代謝が密接に関係していることを示すものといえよう。
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