1988 Fiscal Year Annual Research Report
栄養条件による脂質の吸収・輸送蛋白質の遺伝子発現の調節
Project/Area Number |
63560089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今泉 勝己 九州大学, 農学部, 助教授 (90037466)
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Keywords | アポA-IV / 遺伝子発現 / 脂質輸送 / 小腸細胞 |
Research Abstract |
ヒトを始めとした哺乳動物では多量の脂肪が摂取されているが、小腸粘膜細胞内にこれらが多量に沈着することはほとんどなく、脂質・蛋白質複合体であるカイロミクロンとして速やかに血流中へ輸送される。アポA-IVは食餌脂肪が摂取されないとリンパへの分泌が著減することから、外因性の脂肪輸送に最も密接に関係している蛋白質とみなされている。本研究では分子レベルでのこの蛋白質の合成調節機構と、多量の脂肪流入という情報を伝達する物質をつきとめるための基礎的研究として、クローン化されたラットアポA-IVcDNAを用いて、食餌脂肪の吸収が活発に行われているラット乳仔小腸における本蛋白質遺伝子発現に栄養がどのように関与しているか、更に、その調節機構についての解明を目途として行った。 1.まず乳仔を一夜絶食させた場合の血清トリグリセリドとアポA-IV濃度を測定したところ、絶食時では両パラメーターとも哺乳時と比較して、著しく低下しており、特に、アポA-IV濃度は1/3にまで低下していた。また、乳仔の小腸リンパのアポA-IV濃度は成熟ラットのそれの約4.4倍であり、乳仔小腸では活発なアポA-IVの合成がおこなわれていることがうかがえた。 2.一夜絶食および非絶食の乳仔小腸粘膜細胞から調製したmRNAと[^<32>P]標識アポA-IVcDNAとのDot-Blot Hybridizationを行ない、小腸粘膜細胞内のアポA-IVmRNA量を比較したところ、一夜絶食でアポA-IVmRNA量は1/(10)にまで低下していた。このことから、乳仔における母乳脂肪摂取にともなうアポA-IV分泌の増大は転写レベルでの調節に基づくことが示唆された。 3.現在、Nuclear Run On Assayによって転写レベルでの調節の確認をおこなっている。
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