1988 Fiscal Year Annual Research Report
生物の生産する会合性重金属結合ペプチドに関する研究
Project/Area Number |
63560127
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
今井 邦雄 三重大学, 生物資源学部(農学部), 助教授 (80109313)
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Keywords | 会合性重金属結合ペプチド / 重金属刺激適応 / 分裂酵母 / メタロチオネイン / 植物cadystin |
Research Abstract |
生物は各種外界刺激に適応しつつ生命を維持している。重金属刺激に対して動物や一部の微生物はメタロチオネインと呼ばれる分子量約6000のペプチドを生産し、これに有害重金属を取り込むことによって無毒化、適応していると考えられている。これに対し、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeをCd^<++>で刺激すると低分子量のcadystin A[(EC)_3G]とB[(EC)_2G]が誘導合成され、これらペプチドが複数個集合してCd^<++>を取り込み複合体Cd BPー1と2(それぞれの分子量は4000と1800)を形成することによって適応する。Cadystin類はγーグルタミル結合を多く含む極めて特異な構造のためその生合成機構が注目を集めている。その手がかりを得るべく本菌の対数分裂期にCd^<++>を投与し誘導合成されるcadystin成分をDevelosilーODSによる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やイオン交換中圧クロマトグラフィー(MPLC)を用い詳細に分析した結果、まず、より低分子成分である(EC)_2Gが誘導合成されついで(EC)_3Gが増加することを見いだした。さらに、上記分析条件の精密化を図りHPLC条件を検討した。YMCーODS(AM型)によるHPLC分析では(EC)_3G、(EC)_2G並びにその低分子同族体であるグルタチオン(EC)_1Gをそれぞれ独立に、より詳細に分離分析できる条件を確立することに成功した。本分析条件を主要農産植物の一つである大豆にカドミウム刺激で誘導される重金属適応ペプチドの分析に適用した結果、無処理大豆のグルタチオン生産能は0.3ppmのCd^<++>投与により著しく阻害されるが、Cadystin類が新たに誘導合成されはじめこれが重金属の無毒化に利用されている可能性を強く示唆した。 以上のように本研究の結果、分裂酵母のcadystin類の生合成経路を明らかにすると同時に植物である大豆における対重金属刺激適応機構を明らかにすることに成功した。
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Research Products
(1 results)