1988 Fiscal Year Annual Research Report
RNA合成阻害活性を有する新タクレオシドの化学構造と作用機作の解析
Project/Area Number |
63560131
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池上 晋 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (80011980)
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Keywords | RNA / ピロロシン / ヒトデ / 胚 / 9-デアザイノシン / X線結晶解析 |
Research Abstract |
本研究は海産無脊椎動物イトマキヒトデの胚を用いて、選択的細胞分裂阻害剤の簡便な検索法を編み出した研究代表者の一連の研究の一つとして行われた。イトマキヒトデ受精卵が細胞分裂をくり返す過程で、核のRNA合成はほとんど行われないが、胞胚を形成する時期にメッセンジャーRAN合成が開始する。本研究において多数の微生物培養液中にイトマキヒトデ受精卵の発生を選択的に胞胚形成期で停止させる活性を検索した。その結果、放線菌Streptomyces albusの培養液にこのような活性が認められた。この活性を担う成分を精製・単離したところ、文献未記載の科学的特性を有するタクレオシド様化合物であった。 本研究において、単離されたヌクレオシドの化学構造を直接法によるX線結晶解析によって解析したところ、7-(β-D-Ribofuranosyl)-oxo-3H、5H-pyrrolo-〔3,2-d〕pyrimidineであることが判明した。本化合物は天然未知の新C-ヌクレオシドであり、これをPyrrolosineと命名した。Pyrrolosineは合成9-Deazainosineとは全く物理的・化学的・生物学的性質を異にする。しかし、その化学構造は合成9-Deazainosineのそれと全く同一である。したがって合成9-Deazainosineは提出された化学構造において何らかの誤りがあるものと結論される。 Pyrrolosineはイトマキヒトデ胚内で容易にPyrrolosine5´-triphosphateに転換される。これによって、胚細胞内のピリミジンヌクレオチド含量はその合成が阻害されRNA合成の阻害がもたらされるものと思われる。プリンヌクレオチド含量はPyrrolosine投与によって変化しなかった。また、Pyrrolosine5´-triphosphateをイトマキヒトデ核無細胞転写系に与えたところ、RNA合成は阻害した。したがってこのヌクレオチドロRNAポリメラーゼ活性を阻害することがあきらかとなった。これによって胚は初期胞胚期で発生が停止すると結論された。
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