1990 Fiscal Year Annual Research Report
マツ枯れ進行中の海岸林内への広葉樹の侵入様式と分布域拡大の機構
Project/Area Number |
63560148
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
紙谷 智彦 新潟大学, 農学部, 助教授 (40152855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箕口 秀夫 新潟県林業試験場, 研究員
丸山 幸平 新潟大学, 農学部, 教授 (30018535)
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Keywords | 海岸砂丘林 / 遷移 / 繁殖戦略 / 種子散布 / 野ネズミ / 鳥散布 |
Research Abstract |
植生調査は、前年度に引き続き,東北・北陸地方のマツ枯れ進行中の林分と健全な海岸マツ林について行った。対象地域全体として、冷温帯から暖温帯の主要構成種であるバラ科、ブナ科、ウルシ科の各樹種が多く、これら3科に属する樹種が緯度とともに入れ替わっていた。マツ枯れ進行中の新潟県村上市の海岸アカマツ林における調査からは、広葉樹による遷移初期の空間占有状況が明らかになり、近い将来、大・中高木性広葉樹によって置換されると推定された。 上記3科のうち出現頻度が高かったコナラ、ヤマウルシ、オクチョウジザクラの開花・結実を中心に繁殖生態を調査した。3樹種はそれぞれ雌雄異花同種、雌雄異株、雌雄同花と異なった交配システムを持ち、異なった結実季節と種子散布を鳥類や小動物に依存することなどそれぞれ特徴的な繁殖戦略を有することが明らかになった。 主要広葉樹の結実調査および鳥類センサスによる調査結果からは、樹種ごとの果実サイズおよび結実季節と鳥類相の季節的な出現地域の変化が主要な鳥散布樹種の分布に影響を与えていることが示唆された。 野ネズミ類のホ-ムレンジ調査とコナラ属の堅果消失・散布結果からは、海岸アカマツ林内におけるコナラ属広葉樹の分布拡大に果たす小動物の役割が明らかになった。 以上の結果から、マツ枯れ進行中の海岸マツ林における主要広葉樹の繁殖生態と、それらの分布拡大に果たす小動物や鳥類による種子散布の生態的意義が明らかになった。今後は、さらに異なった植生域における立枯れ林分の動態や撹乱下での主要広葉樹の生理生態的機能の評価が明らかにされる必要があろう。
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