1988 Fiscal Year Annual Research Report
日本産ナラタケ(armillaria mellea)の分類学的再検討
Project/Area Number |
63560155
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Research Institution | Japan Kinoko Research Center Foundation |
Principal Investigator |
長沢 栄史 (財)日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 室長代理 (70088839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 二太郎 (財)日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 研究員 (00142638)
小松 光雄 (財)日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 部長 (60088846)
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Keywords | ナラタケ / ならたけ病 / Armillariella / 分類学 |
Research Abstract |
1.野外調査:西日本および北日本地域において調査を実施し、鳥取、岡山、広島、青森、岩手、秋田、福島の7県より、総数において子実体標本43点、単胞子分離菌株41株834系統および組織分離菌株15株を得た。西日本では、9月下旬〜11月上旬にかけて、一方北日本では、調査を実施した7月(福島)および10月において子実体の発生が認められた。発生は林内の倒木あるいは古株上、林縁開放地の切株、腐朽した丸太上などが主であり、とくに従来の報告と異なった環境での発生は認められなかった。発生状態は、著しく群生するものから単生するものまであった。 2.子実体標本の形態学的調査:(1)つばの性質、(2)傘の表面の性質(とくに色、鱗被の発達の程度およびその色)、(3)ひだの柄に対する着き方および疎密の程度、(4)柄の形状およびその表面の状態、(5)担子器の基部におけるクランプ結合の有無などの特徴に基づき、西日本および北日本の両地域に分布する2つの集団と、地域的に分布する5つの集団(西日本2、北日本3)の存在が推定された。文献に基づき、これらの集団を分類学的に検討した結果、西および北日本の両地域に分布する2集団の1つはarmillariella mellea s.str.、また北日本に分布する集団の1つはA.ostovaeと考えられた。 3.培養的性質の調査:二次菌糸体を供試し、馬鈴薯ぶどう糖寒天培地および麦芽エキス寒天培地(平面および斜面培地)を用いて、子実体の形態学的特徴に基づく分布集団の類別と培養的性質の関連性を調査した。その結果、同一分布集団に属すると考えられる子実体から分離された菌株は、両培地上において、(1)根状菌糸束の形成、(2)コロニー形態、(3)色素の形成などの諸性質においてほぼ共通の性質を示し、培養的性質に基づいて分布集団を推測することがある程度可能であると考えられた。菌株間の培養的性質の差異は、両培地を同時に用いたときより明瞭である。
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