Research Abstract |
1.標本および菌株の交換,関東地方での野外調査によって,東京都および茨城,栃木,和歌山,青森,島根,鳥取の各県より新たに57点の子実体標本,49組織分離菌株,および37菌株498系統の単胞子分離菌糸体を得た。これらを用いて従来の試験結果を追試再検討した結果,前年度までに見い出された5つの不和合性集団(A〜E)に加えて新たな1不和合性集団(AM)の存在が確認された。 2.子実体の形態学的特徴に基づいて前年度までに見い出された10の分布集団(I〜X)と,交配試験によって見い出された6つの不和合性集団との関連について検討した結果,その関係はI=AM,II,VIII=A,III=B,IV,X=E,V,VI=D,VII=Cであった。子実体において一定の形態学的特徴を持った集団が,2つあるいはそれ以上の不和合性集団に含まれることは無く,日本において本研究中に確認された6つの不和合性集団は形態学的にも独自の特徴を具えた集団であると考えられた。これらの集団の国内における地理的分布は,C集団が関東以北であった以外ほぼ全国的であったが,Aは主に西日本に,DおよびE集団は主にブナ・ミズナラ林帯に分布する傾向が認められた。 3.日本産ナラタケにおける6つの不和合性集団は,子実体の形熊学的特徴においてもそれぞれ異なり,分類学的に独立した種として取り扱われるべきであると考えられた。既知種との検討の結果,AM集団は,Armillaria mellea(Vahl:Fr.)Kumm.(=Armillariella mellea(Vahl:Fr.)Karst.)s.str.,CはA.ostoyae(Romag.)Herinkと同定され,一方,BおよびEは該当する種を見い出すことができないので新種と判断された。AおよびDについては最終的な種の同定までには到らなかったが,子実体の形態学的特徴から判断してそれぞれA.lutea Gillet?およびA.cepistipes Velenovsky?と考えられた。
|