1988 Fiscal Year Final Research Report Summary
高知県における伝統的和紙製造法の技術保存に関する研究
Project/Area Number |
63560171
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
林産学
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
鮫島 一彦 高知大学, 農学部, 助教授 (50038254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 新二 高知大学, 農学部, 助教授 (50036753)
高村 憲男 高知大学, 農学部, 教授 (20036750)
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Project Period (FY) |
1988 – 1990
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Keywords | 和紙製造法 / 紙パルプ / 化学処理 / ペクチン / 靭皮繊維 / 非木材繊維 / 伝統的工芸品 |
Research Abstract |
古代和紙の蒸煮に用いられたとされる木灰処理を中心として検討した。まず、木灰の組成は樹種、部位ごとに異なることから、外国産材6樹種、国内産針葉樹6種、国内産広葉樹4種、および靭皮原料につき、全灰分およびCa、K、Mg、Naについての元素分析を原子吸光り分析計などを用いて測定した。ついで、針葉樹のうちアカマツ、ヒノキ、スギの3種、広葉樹のうちツバキ、ブナ、シラカバの3樹種については600℃灰化試料に純水を加え、その水可溶部の分析を行った。その結果、木材の灰分はほとんどの場合1%以下であるが、靭皮原料では3〜4%に達すること、比Ca/Kは木材では1〜2と小さいが、靭皮原料では38〜56と著しく大きいことがわかった。水可溶部では、針葉樹、広葉樹にかかわらずKの移行量が最も大きく、古代和紙製造に用いられたとされる木灰汁の主元素はカリウムであることがわかった。つぎにその対イオンについて、Bacl_2、AgNo_3などを用いた定性、定量分析、および加熱重量減少の測定結果などから検討した結果、炭酸イオンが主体と判明した。即ち、木灰汁の主成分は炭酸カリウムであり、その他、Ca、Mg、Naの炭酸潮と少量の水酸化合物を含んでおり、その他、未確認成分が約8.5%あった。 木灰汁蒸煮パルプ調製し、Na_2Co┣D23┣D1、NaOH、シュウ酸アンモニウムなどによる蒸煮パルプと比較検討したところ、他のすべてのパルプよりも添加量当りのパルプ収立減量が少く、かなり温和なパルプ化が行われていると推定された。ベクチンの徐去率も予想外に小さく、顕微鏡的にも結束繊維の残存が認められ、しかも強度的にも中程度とこれらの点から木灰処理の長所は明らかにできなかった。 主要な和紙産地の現地調査では、古くからの和紙製造法はますます行われなくなってきており、しかも原料すらタイコウゾなど輸入品に頼り始めている現状がさらにはっきり認識された。
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