1990 Fiscal Year Annual Research Report
高知県における伝統的和紙製造法の技術保存に関する研究
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63560171
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
鮫島 一彦 高知大学, 農学部, 助教授 (50038254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 新二 高知大学, 農学部, 助教授 (50036753)
高村 憲男 高知大学, 農学部, 教授 (20036750)
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Keywords | 和紙 / 紙パルプ / ペクチン / 靭皮繊維 / 非木材繊維 / 伝統的工芸品 |
Research Abstract |
本年度の研究計画の最終年度であるのでこれまでの結果を総括するとともに伝統的和紙技術の保存についての提言を行うことを主目的とした。 本研究では蒸煮薬剤として、木灰、石灰、NaOH、Na_2CO_3、K_2CO_3およびシュウ酸アンモニウムの6種を用い、得られたパルプの収率、ペクチン除去率、脱リグニン率、シ-トの強度、白色度、色調、色戻りなどを測定して各薬剤の特色を明らかにした。木灰処理では温和な処理が行われるが、ペクチン除去率、脱リグニン率共に小さく、原料を厳選しないかぎり上盾の和紙は得られにくい方法であることがわかった。石灰処理では、高知県で特徴的に行われている多量の石灰を用いる処理法が他の薬剤でみられない収率や色調のパルプを与えることを確認した。NaOHでは急激な収率低下が起り、強度的にも低いシ-トになる。Na_2CO_3やK_2CO_3では収率低下が押えられるものの、シュウ酸アンモニウムほどの選択的なペクチン除去は行えないことが明らかになった。 このように、伝統的和紙製造法で用いられている木灰や石灰は、比較的近年になって用いられるようになったNaOHやNacO_3と異る特徴的パルプを与えることがわかった。しかし、木灰処理のように原料への条件が厳しいものでは、シュウ酸アンモニウムのような現代的な薬剤を用いることにより容易に類似のパルプが得られることから、この点さらに精査する必要がある。 原料不足、後継者問題など和紙を取りまく環境は厳しい。しかし、他方、各国での手すき紙分野の発展、ここ高知県への和紙調査に訪れる外国人の増加は著るしい。また、地球環境保全の立場から、地球規模での靭皮繊維原料の栽倍が再び注目され始めているなどの状況もある。従って、これからの高知県の伝統和紙技術もこれらとリンクすることによってその保持を図る必要がある。
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[Publications] 鮫島 一彦・ほか: "伝統的和紙製造法の化学的研究(1)" 古文化財の科学. 33. (1991)
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[Publications] K.Sameshima,S.Fujiwara,D.Horie and N.Takamura: "Proceedings of International Symposium on Wood and Pulping Chemistry (Raleigh,USA)" アメリカ紙パルプ技術協会(TAPPI), 785 (1989)