1990 Fiscal Year Annual Research Report
噴火湾とその周辺海域におけるアカガレイの回遊と再生産構造に関する研究
Project/Area Number |
63560178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 豊美 北海道大学, 水産学部, 助教授 (40002349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 敏邦 北海道大学, 水産学部, 助手 (80188979)
前田 辰昭 北海道大学, 水産学部, 教授 (00001595)
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Keywords | アカガレイ / 噴水湾 / 分布と回遊 / 生活年周期 / 食性 / 卵・稚仔 / 競合 / 餌生物環境 |
Research Abstract |
本研究はほぼ本年度当初計画通り実施された。 1.成魚・未成魚調査を平成2年5月と8〜9月の計2回実施した。今年度得られた成果は次の通りである。成魚群の分布・回遊に関与する内部要因として、生活期を産卵期(12〜5月,盛期1〜3月)、摂餌盛期(5〜6月)および摂餌緩慢期(7〜11月)の3期に区分した。アカガレイは産卵期には沿岸域へ移動するが、それ以外の時期は湾内最深域(80m以深)を中心に分布する。湾内深部の底層は黒潮起源の冬季噴火湾水が残存するため周年低温状態が維持され、このような海洋構造が2〜7℃が適温とみられる寒海性種のアカガレイが繁殖できる重要な要因となっている。アカガレイはメガロベントスを主食するが、魚類やプランクトンも摂食する広食性種である。当海域に分布するアカガレイには食物をめぐる他魚種との強い競合関係はなく、餌生物環境に対応した摂食行動をとる。また、アカガレイは成長に伴って食性を変化させるが、食性の転換により同種内で環境中の餌生物資源を分配できることも、本種が湾内底生魚類群集で優占的地位を維持する基盤の一つになっている。 2.卵・稚仔調査は平成3年1月、2月3月の計3回実施した。アカガレイ卵は12〜4月に採集され、1〜3月に高密度分布を示した。卵の発生段階別分布から、主産卵場は噴火湾奥部から南部に至る沿岸域と推定された。卵は反時計回りの環流に輸送されながら発育を進め、その多くは湾内南部から湾口部南側付近で孵化する。噴火湾東方の湾外で産出された卵は親潮系水によって湾内に輸送され、また、湾内産出卵の一部が湾口部南側を経て湾外に流出しているが、その量はともに少ない。初期減耗が最も大きいとされる浮遊仔魚の主餌料の橈脚類ノ-プリウスの密度は、親潮系水が流入する2〜3月に急増している。このことは、2〜3月の湾内が浮遊仔魚の生残に有利な餌料環境を形成していることを示唆している。
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[Publications] 横山 信一,前田 辰昭,高橋 豊美,中谷 敏邦,松島 寛治: "噴火湾およびその沖合における底生魚類群集の時空間分布" 北海道大学水産学部研究彙報. 40(1). 8-21 (1989)
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[Publications] 中谷 敏邦,小泉 広明,横山 信一,前田 辰昭,高橋 豊美,松島 寛治: "噴火湾産アカガレイの年齢と成長" 日本水産学会誌. 56(6). 893-901 (1990)
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[Publications] 横山 信一,前田 辰昭,中谷 敏邦,高橋 豊美,松島 寛治: "噴火湾およびその沖合におけるアカガレイの分布・移動について" 水産海洋研究. 54(4). 373-380 (1990)
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[Publications] 横山 信一,前田 辰昭,高橋 豊美,中谷 敏邦,松島 寛治: "噴火湾におけるアカガレイ成魚の生活年周期" 日本水産学会誌.
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[Publications] 宮本 孝則,高橋 豊美,中谷 敏邦,前田 辰昭,松島 寛治: "噴火湾とその沖合におけるアカガレイ卵・稚仔の分布と食性" 北海道大学水産学部研究彙報.
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[Publications] 横山 信一,前田 辰昭,高橋 豊美,中谷 敏邦,松島 寛治: "噴火湾とその沖合におけるアカガレイ成・未成魚の摂餌生態" 日本水産学会誌.