1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63560190
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒倉 寿 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (50134507)
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Keywords | 魚類 / 胚 / 凍結保存 / 受精卵 |
Research Abstract |
すでに、卵膜・卵黄を取り除いた魚類胚では、液体窒素中での生存の可能性が示されている。本年度は、効率的な卵膜の除去方、卵膜を除去した胚の発生について検討するとともに、卵膜を取り除いた胚および取り除かない胚について凍結保存の可能性を検討した。さらに水生生物胚の凍結保存一般の基礎的知見を得る目的で、ミオミズツボワムシ単性生殖雌卵(ワムシ卵)およびムラサキイガイ胚の凍結保存についても実験を行った。卵膜の除去は、アクチナーゼ(阪大微研)、パンクレアチン(阪大微研)、トリプシン(Merck)のタンパク分解酵素を用いて行った。これらの酵素はすべてリンゲル液に希釈して用いたが、最も少量で効果があったのはアクチナーゼであり、ヒラメ胚の発生適温である16.5℃の条件下では、0.5g/lの濃度で5時間の浸漬により、卵膜の除去が可能であった。これに対してパンクレアチン、トリプシンでは、同じ速度で卵膜を分解するのに、それぞれ5g/l、10g/lの濃度が必要であった。しかし、卵膜を除去した胚の正常発生率は、トリプシンで最も高く、アクチナーゼで低かった。このことから、アクチナーゼによる処理は胚発生に有害であると思われた。また、酵素処理をよび卵膜の除去を発生初期に行った場合には、胚および卵黄に損傷を生じやすく、原口閉鎖期以後に処理を行うことにより、高い割合で正常発生胚が得られることが明らかになった。なお、本年度は今までのところ、液体窒素中に保存後に発生を続ける胚を確認することはできなかった。しかし、ワムシ卵およびムラサキイガイの胚ては、40%以上の生残率で、液体窒素中に保存後、正常に発生する胚を得ることができた。これらの胚では、発生の後期ほど胚の耐凍性が高いことが明らかとなり、魚類胚についても、従来の初期胚の保存とは別に、後期胚の凍結保存について、検討を行う必要があるものと思われた。
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