1988 Fiscal Year Annual Research Report
食品ハイドロゲルの物性に及ぼす水の流動性の影響について
Project/Area Number |
63560203
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
丹羽 榮二 三重大学, 生物資源学部(水産学部), 教授 (70046340)
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Keywords | 食品ハイドロゲル / 自由水 / 結合水 / エントロピー弾性体 / 食品の物性 |
Research Abstract |
食品ハイドロゲルの物性に及ぼす水の流動性の影響を調ベるため実際の食品ゲル及びハイドロゲルモデルを使って次の検討を行なった。 1)かまぼこ中の水の状態に及ぼす温度の影響 エントロピー弾性体であるかまぼこの瞬間弾性率、貯蔵弾性率、損失弾性率が温度上昇につれて低下する理由を調べた。かまぼこの温度を0°から80°Cまで上昇させると、離奬による重量減少、静電容量及び圧出水分量の増加が認められた。さらにIR差スペクトルで観測される自由水は増加した。一方、光学顕微鏡で観察される網状構造は温度上昇につれて散逸する傾向にあった。これらの結果から、かまぼこの温度上昇による結合水から自由水への転換が物性低下の原因になり得ると推定した。 2)ハイドロゲルモデル中の水の流動性がその物性に及ぼす影響について。 テニスボール(径:6cm)にあけた孔にポリ塩化ビニル管(長さ:77cm、内径:5mm)をさしこんで接着し、これにポリエチレングリコール600(PEG)溶液を満たしたものをハイドロゲルモデルとした(図1)。PEG濃度を上げるとこのモデルの応力ー歪曲線から得られる弾性率、粘性率は増加した。また応力緩和、クリープ試験から得られる瞬間弾性率、粘性率は増加したが、平衡弾性率は増加しなかった。 以上のように実際の食品ゲル、モデルのいずれについてもその中の水の流動性が物性に大きく影響することが示唆された。来年度にさらに複雑なモデルを使って検討する予定である。
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