1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63560215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三好 正喜 京都大学, 農学部, 教授 (80026476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 幹雄 京都大学, 農学部, 助教授 (40081096)
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Keywords | 近畿農業 / 農業経営 / 地主制 / 小商品生産類型 / 農業生産力 / 兼業化 / 商品市場 / 労働市場 |
Research Abstract |
本年度は、従来から行なってきた京都・大阪など近畿先進地帯での資料調査・研究をさらに進めた。その成果の一部は、三好正喜編著『戦間期近畿農業と農民運動』として公刊した。さらに近畿地域のなかの中間地帯である京都府北部養蚕地帯の養蚕農家の経営分析を進めた。そこで解明したことは、1920年代に大都市が一段と発展したことにより土地市場・労働市場・商品市場などの各市場を通じて大きな影響を及ぼされた近郊農村において、農業所得・農業現金所得(農業生産)と家計費および家計費現金支出(消費)との不均衡が拡大し、その解決のため農業所得の増大(小商品生産の推進とそれに見合った農業生産力の上昇)と兼業所得の増大が追求され、この追求のなかで近畿地域の村落は、ある場合には小商品生産化の道を、ある場合には兼業化の道をとったこと、そこでは商業的農業生産において商品作物が米型→米+α型→α型へと展開するにつれ粗生産に対する小作料割合が低下したこと、農業の商品生産的性格が強まるにつれて、肥料費を中心に資本との関係が広がり深まったこと、すなわち地主制との矛盾は限界を持ちながらも相対的に減少したが、他方で資本との矛盾が次第に増大したこと、しかし農業所得水準は地主制との矛盾に資本との矛盾が重なり、伸び悩んでいたこと、兼業所得が成人男子1人当り農業所得を上回る村落が出現したこと、家計費水準は兼業化が進んだ集落で高くなっていたことなどであった。 以上の研究と併行して、国を国会図書館での資料閲覧、新潟県地主文書の採訪(中頸城郡三和村富永家、南蒲原郡下田村藤崎家)や秋田県比内町の役場文書の採訪を行ない、近畿農業と東北農業の構造的特徴を比較検討を行なうための基礎資料の収集と整理検討を行なった。 来年度は、これらの研究をさらに深化させつつ、とくに養蚕地帯農業の構造的特徴を明らかにすることも重点の一つとしたい。
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Research Products
(1 results)