1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63570007
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 敬一 鳥取大学, 医学部, 教授 (00031948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
満嶋 明 鳥取大学, 医学部, 助手 (80116376)
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Keywords | 超高分解能走査電顕 / 抗体 / IgM / 重金属塩染色 |
Research Abstract |
本年度は主として免疫グロブリンM(IgM)についての観察を行った。IgMはIgGに比べかなり大きいので、サイズの点では観察し易い抗体であるといえる。しかし一方、IgMは電子線による障害を受け易く、観察中、みるみるうちに姿を消して行くという難しさが存在する。また、二次電子の放出が弱く、したがってコントラストの弱い欠点もあった。そこで、いかにしてこれらの問題を克服するか研究を行った。 方法としては重金属塩染色を用いることとし、染色する材料としてはIgMに先立って扱いやすいヘモシアニン、アポフェリチンなどを用いた。その結果、染色する重金属液としては、燐タングステン酸、酢酸ウラニル、タンニンーオスミウムが良いことが判明した。もっとも、これら三つの染色はそれぞれ特徴があり、燐タングステン酸は染色によって試料サイズの増大をきたすことはないが、酢酸ウラニルは多少大きくし、タンニンオスミウム法は著明に試料を大きくした。しかし,電子線障害に対する抵抗性についてみると、逆にタンニンオスミウム法がもっとも効果的であり、燐タングステン酸は最も効果が弱かった。また、試料内の微細構造を明らかにするには酢酸ウラニルが良く、ヘモシアンにおいては、その中の十個の点状構造や横線などが他の二つの方法におけるものよりはっきりしていることが明らかとなった。 以上の結果をふまえ、これをIgMに応用したところ、電子線障害なく、またコントラストの改善を得て、走査電顕ではじめてIgMの明瞭な形態を観察することに成功することができた。その形態はすでにX線回析や陰性染色によって報告されているものと同じで、5個のサブユニットが放射状に並んだ形をしており、そえぞれのサブユニットは丁度IgGのような形をしていることが観察された。
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[Publications] Tanaka,K.,Mitsushima,A.,Kashima,Y.,Nakadera,T.and Osatake,H.: "Application of an ultra high-resolution scanning electron microscope(UHS-T1)to biological specimens." J,Electron Microsc.Tech.12. 146-154 (1989)
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[Publications] 中寺尚志,満嶋明,田中敬一: "生体高分子の走査電顕観察のための金属染色法" 医生物走査電顕. 18. (1989)
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[Publications] 山県昇,鹿島譲,満嶋明,田中敬一: "超高解像度走査電顕法の免疫細胞科学への応用" 医生物走査電顕. 18. (1989)
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[Publications] 田中敬一: "超ミクロ世界への挑戦" 岩波書店, 213 (1989)