1989 Fiscal Year Annual Research Report
網膜視細胞の形態分化にかかわる遺伝的背景の培養による解析
Project/Area Number |
63570013
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Research Institution | Jichi Medical School |
Principal Investigator |
荒木 正介 自治医科大学, 医学部, 講師 (00118449)
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Keywords | 網膜 / 視細胞 / 細胞分化 / 細胞培養 / ロドプシン / 松果体 / ノルエピネフリン / ラット |
Research Abstract |
前年度の研究実績をもとに、網膜視細胞分化のラット系統による違いを、特に、グリア細胞の関与について、また神経伝達物質にも注目して検討を行なった。2系統のラットで正常視細胞と異所性視細胞の形態を分析し、さらに網膜グリア細胞であるミュ-ラ細胞の形態に関しても特異抗体(S-100タンパク)による染色を行なって両系統で比較した。発生過程のミュ-ラ細胞の形態と分布に関しては、特に目立った差は認められなかった。また、細胞培養系で視細胞分化の因子を解析するためには、細胞タイプを選別して培養することが重要であるので、これまでのコラ-ゲン基質に替えてPoly-L-Lysineを用い、グリア細胞をほとんど含まない培養系を得た。この培養系では、系統による違いが視細胞そのものに起因するのか、あるいはグリア細胞など他のタイプの細胞の違いによる2次的な結果によるのかを知る事ができよう。現在の培養条件では1週間以上視細胞を維持することが困難であり、培地の改良などを含めて実験条件の検討を続けている。 網膜の培養と並行して松果体の培養を行ない、これまで哺乳類松果体には存在しないとされていた視物質ロドプシンを産生する細胞が培養条件下で出現することを発見した。また、ロドプシン産生細胞(「松果体性視細胞」)の出現は微量の神経伝達物質ノルエピネフリン(NE)の添加によって特異的に抑制されることが明らかになった。同じ現象が網膜の視細胞の場合に見られるかどうかを培養系で調べた結果、GABA性網膜神経細胞は影響を受けないような濃度のNE存在下で視細胞の出現が抑制されることが明らかになり、松果体と共通の視細胞の分化調節機構の存在が示唆された。2系統のラットの網膜で、カテコ-ルアミン性神経の分布を調査したところ、発生の初期でその分布にわずかな違いがあることがわかったので、さらにその詳細を電顕で調査しつつある。
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[Publications] Araki,M.: "Norepinephrine suppresses both neuronal and photo-receptor properties expressed by cultured rat pineal." Cell Differ.Develop.
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[Publications] Araki,M.: "Localization of iodopsin in the chick retina during in vivo and in vitro cone differentiation." Invest.Ophthalmol.vis.Sci.(1990)
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[Publications] Nonaka,T.: "Transplantation of the rat pineal body to the brain:Pinealocyte differentiation and fiber innervation." Cell Tissue Res.(1990)
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[Publications] Kamegai,M.: "Interleukin 3 as a nerve trophic factor for central cholinergic neurons in vitro and in vivo." Neuron. (1990)
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[Publications] Araki,M.: "GABA-like immunoreactivity in the developing retina:Differentiation of GABAergic horizontal cell and its inputs to phtoteceptors." J.Neurocytol.