1988 Fiscal Year Annual Research Report
培養神経細胞を用いた神経細胞膜機能の老化に伴う変化の研究
Project/Area Number |
63570041
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
堀江 秀典 横浜市大, 医学部, 講師 (80046135)
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Keywords | 組織培養 / 神経細胞 / 老化 / 低張液に対する応答 / 膜の弾性率 / 細胞容積調節機構 / 細胞内骨格 / 神経再生 |
Research Abstract |
マウスより摘出分離された後根神経節細胞を用いることにより、光学顕微鏡下で低張液作用後の細胞の形態変化を他の組織からの影響を受けることなく詳細に検討することが出来た。低張液作用後神経細胞の直径(細胞の形状は球形に近い)はまず増大し、その後同一の低張液条件下で作用前の大きさに戻る。このように神経細胞は低張液下で細胞容積を調節する能力があることが判明した。次にこうした形態変化に伴う膜の性質の変化を電気生理学的に測定した結果、容積増大に伴う表面積の増大に際し、膜抵抗は減少し、静止電位は5〜10mV脱分極する。しかし、脱分極状態でも活動電位の大きさに大きな変化がみられなかった。細胞膜が拡張されることによりチャンネルが開きやすくなったのではないかと考えられる。以上の現象は、胎生期・3ケ月齢・27ケ月齢のマウスよりそれぞれ取り出された神経細胞に見られたが、容積の増大する時間経過に年齢による違いがみられた。幼若な神経細胞に低張液を作用させた場合、直径が最大値に達するまで60秒かかり、3ケ月齢の神経細胞では、180秒、老化した27ケ月齢の神経細胞では300秒かかった。このように低張液に対する細胞の伸展応答は年と共に低下していくのが明らかとなった。その要因の一つとして膜の弾性的な性質が加齢に伴い低下していくことが考えられる。EACM法により神経細胞膜の弾性率を測定してみると幼若な神経細胞の方が弾性に富み、年と共に低下していくことが判明した。膜の伸展性、弾性的な性質は、細胞内骨格蛋白との係り合いが深いことから、現在微小管・マイクロフィラメントをそれぞれ脱重合させる試薬を用い、膜の裏打ち蛋白との係り合いを明らかにする研究を行っている。以上の研究の結果は、神経細胞の再生能の加齢に伴う低下と一致しており、膜の物理的な性質と再生との係り合いを今後明らかにしていく計画である。
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[Publications] Hidenori Horie: Brain Research. 477. 233-240 (1989)
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[Publications] Naoshi Hikawa: Brain Research. 481. 162-164 (1989)
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[Publications] Voon W.Yong: Developmental Neuroscience. 10. 222-230 (1988)
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[Publications] Hidenori Horie: Neuroscience Research. (1989)