1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63570066
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Research Institution | Keio University School of Medicine |
Principal Investigator |
河村 悟 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (80138122)
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Keywords | 視細胞 / アスパラギン酸 / グルタミン酸 / カルシウム / 脱分極 / 伝達物質 / 光刺激 |
Research Abstract |
昨年度の成果に基づき、膨らんだ視細胞神経終末を有している単離視細胞を任意の溶液で灌流することが可能になったので、視細胞から放出されるアミノ酸を分析した。その結果以下のことが明らかになった。1.暗時においては、ほとんどすべてのアミノ酸が検出されること、つまり、実験に用いた標本では、暗時における特異的アミノ酸の放出は観察されなかった。2.さらにその放出は光による影響を殆ど受けなかった。視細胞を低カルシウム処理やホスホジエステラ-ゼ阻害剤で処理すると脱分極することが知られているが、このような条件下では伝達物質の放出も盛んであると予想される。従って、この条件のもとで光照射すれば伝達物質の放出量の変化を観察できるのではないかと考えた。しかし、分析の結果光の効果は観察できなかった。3.化学物質や外液のイオン組成を変えることによって視細胞を脱分極させるとアミノ酸の放出量が著名に増加すること。この増加もある特定のアミノ酸にみられるのではなく、分析した酸性アミノ酸すべてに共通して観察された。4.脱分極にともなうアミノ酸放出量の増加にはカルシウムイオンは関与せず、カルシウムを加えずに、逆にコバルトを添加した際にも脱分極によってアミノ酸の放出量は増加した。 以上の結果から、1.視細胞神経終末から放出される伝達物質は一種類ではなく、多種類のアミノ酸が同時に放出され、二次ニュ-ロン側に特定の受容体が存在することによって伝達が可能になっている可能性、2.本実験で使用した単離視細胞標本には真の神経終末が含まれておらず、伝達物質の放出が行なわれていない可能性、3.伝達物質の放出を行なっている視細胞の全体に対する比率が小さいため、放出は行なわれているものの、ノイズの中に埋もれてしまい検出が難しい可能性、等が考えられる。何れの可能性が高いのかは、本実験では明らかでなく、視細胞の伝達物質を特定するためには更に詳細な注意深い研究が必要であるといえる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kawamura S.and Murakami M.: "Light-induced Michaelis constant increase is rapid and inherent in cGMP phosphodiesterase in frog rod outer segments." Zool.Sci.5. 801-808 (1988)
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[Publications] Kawamura S.and Murakami M.: "Control mechanism of photoreceptor potential." Molecular Physiology of Retinal Proteins.ed.by T.Hara,Yamada Science Foundation. 173-178 (1988)
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[Publications] 河村悟: "脊椎動物視細胞内cGMPの濃度調節と適応。" 「蛋白質・核酸・酵素」 増刊「視覚の分子メカニズム」. 165-173 (1989)
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[Publications] Kawamura S.and Murakami M.: "Regulation of cGMP levels by guanylate cyclase in truncated frog rod outer segments." J.Gen.Physiol.94. 649-688 (1989)
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[Publications] Kawamura S.and Murakami M.: "Control of cGMP concentration by calcium ions in frog rods." Neurosci.Res.Suppl.10. 15-22 (1989)