1988 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス前膜のGTP結合蛋白を介する伝達物質放出機構
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63570075
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
三輪 昭子 東京都神経科学総合研究所, 病態神経生理学研究室・主事研 (60142155)
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Keywords | シナプス前神経 / グルタミン酸 / GABA / G-protein / GTPγS / シナプス後電位 / イセエビ歩脚 |
Research Abstract |
シナプス前神経におけるGTP結合蛋白の作用を調べるためイセエビ歩脚の神経筋標本を作成し、伸張筋の支配神経を単一に分離した。神経終末近傍のシナプス前膜に数本の微小電極を刺入し、グルタミン酸及び他の興奮性アミノ酸、又抑制性の伝達物質であるγ-amino-butyric acid(GABA)及びその類縁物質を微量局所投与し、生ずる反応の膜電位による変化を観察した。 グルタミン酸や、GABAの類縁物質を与えるとシナプス前膜に過分極電位が記録されるが、GABAにおいてはその類縁物質であるBaclofenによる電位変化が、GABAよりも明瞭にみられた。さらにこれら過分極性電位はカリウムイオンに依存していることがわかった。さらに記録できたシナプス前膜の過分極性電位は、抑制性グアニンヌクレオチド結合蛋白(G-protein)の活性化に起因することが、百日咳毒素(IAP)による阻害効果によって明らかになった。 イセエビ歩脚の神経筋標本は、またシナプス後膜からシナプス後電位(EPSP、IPSP)を記録することができるが、G-proteinの非水解性誘導体であるGTPγSの入った微小電極をシナプス前膜に刺入して細胞内に注入しシナプス前膜、シナプス後電位の変化を調べてみた。GTPγS注入後シナプス前膜は、膜電位が過分極になる。後膜においては短時間でEPSPの振幅を徐々に減少し、洗浄をしてもEPSPは元に戻ることはなかった。これらの作用は細胞膜内のカリウムイオンチャネルがGTPγSによって活性化し、その結果伝達物質の放出が減少したと考えられる。以上の結果からG-proteinが細胞の膜の内側から作用してシナプス伝達を調節をしていることが推察される。
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