1990 Fiscal Year Annual Research Report
運動によるふるえの抑制に関与する介在ニュ-ロンの形態と機能
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63570084
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
野本 茂樹 (財)東京都老人総合研究所, 中枢神経部門, 研究員 (70125235)
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Keywords | ふるえ / 運動 / 神経細胞間輸送 / WGA / 鳥類 / 胸筋 / Nucleus reticularis parvocellularis |
Research Abstract |
脊髄冷却によってハトの胸筋に引き起こされたふるえは、運動を開始すると反射的に抑制される。この反射に関与する神経回路を明らかにする一環として、本年度はハトの胸筋運動ニュ-ロンに終末する介在ニュ-ロンをWGA(コムギ胚凝集素)がもつ神経細胞間輸送とよばれる性質を利用して検索した。神経細胞に取り込まれたWGAはABC法を用いて免疫組織化学的に検出した。 その結果、WGA陽性の介在ニュ-ロンは左右両側の網様体外側部にある小細胞網様体(N.reticularis parvocellularis:Rpc)で見つかった。以前のWGAーHRPを用いた実験でもこの小細胞網様体ニュ-ロンは見つかっているが(昭和63年度研究実績報告書参照)、今回の実験の方が前回の実験よりも数多くの陽性細胞が見つかった。この理由としてWGAの方がWGAーHRPよりも分子量が小さいこと、今回用いた免疫組織化学的方法の方が発色過程で人工産物が混入しにくいこと等が考えられる。すなわち鳥類において神経細胞間輸送を利用して二次ニュ-ロンを標識するにはWGAは非常に優れた標識物質であるといえる。 哺乳類の網様体外側部には網様体脊髄路細胞の起始核が多数存在し、頚や体幹筋に終末していると考えられている。またBirzis & Hemingway(1956,1957)の破壊実験によるとふるえの中枢内遠心路は網様体外側部から脊髄に下降しているとしている。さらに昨年度行った電気生理学的な実験からハトのRpcニュ-ロンは胸筋のふるえに関与していることが示唆されている。したがって本実験で見つかった小細胞網様体ニュ-ロンは胸筋運動ニュ-ロンに終末し、ふるえなどの胸筋活動を制御していることはほぼ間違いがないものと考えられる。 なお本実験においても胸筋に終末していると見られる介在ニュ-ロンを脊髄内に見い出すことはできなかった。
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[Publications] S.Nomoto: "Primary afferent fibers mediating the inhibition of shivering by treadimill exercise in pigeons." Jpn.J.Physiol.40(Suppl). S275 (1990)
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[Publications] S.Nomoto: "Reticulospinal neurons revealed by retrograde transneuronal transport of WGAーHRP injection into the pectoral muscle in pigeons." Comp.Physiol.Biochem. 7(4). 200 (1990)