1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63570126
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
田辺 忠 国立循環器病センター研究所, 薬理部, 部長 (60025624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 勝 明治乳業ヘルスサイエンス研究所, 細胞生物学研究室, 室長
横山 知永子 国立循環器病センター研究所, 薬理部, 室員 (90200914)
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Keywords | 脂肪酸生合成 / 代謝調節 / アセチルCoAカルボキシラ-ゼ / ビオチン / 構造 |
Research Abstract |
脂肪酸は、生体膜やエネルギ-源である中性脂質の構成成分として、生体にとって不可欠な物質である。しかし、脂肪酸の過剰は肥満や動脈硬化をはじめとする種々の循環器病の成因となっている。このため、本研究では、脂肪酸生合成調節機構の解明を目的として、脂肪酸生合成律速酵素であるアセチルCoAカルボキシラ-ゼの分子レベルでの研究を行い、以下に述べる結果を得た。 1.我々の肝臓アセチルCoAカルボキシラ-ゼの全一次構造の決定に続いて、種々のビオチン酵素の全構造が報告され、ビオチン酵素の分子進化を推定することが可能になった。全てのビオチン酵素に共通して存在するビオチンカルボキシルキャリア蛋白部位の一次構造をLiの方法で処理し、系統樹を作成した。大腸菌アセチルCoAカルボキシラ-ゼに代表される単機能蛋白集合型から複合機能単一蛋白型への進化を示す、これまでの酵素化学的研究からの予想と一致する結果が得られた。 2.アセチルCoAカルボキシラ-ゼ遺伝子の発現機構を明らかにするため、ヒト・アセチルCoAカルボキシラ-ゼ遺伝子のクロ-ニングをおこなった。遺伝子のうち約40kをクロ-ニングし、そのうち13.4kbの制限酵素地図とエクソンとその近傍の塩基配列を決定した。その結果、4個のエクソンに分散した404残基の蛋白翻訳領域の塩基配列が明らかになった。この塩基配列から推定した134残基のアミノ酸配列は、ニワトリおよびラット肝臓酵素とそれぞれ95および98%一致した。このことから、ヒト・アセチルCoAカルボキシラ-ゼ遺伝子の長さは250〜300kbにも及ぶと考えられる。予想されたアミノ酸配列には、ATP結合部位に認められる共通の配列(GXGX_2GX_<14>R)が存在する。現在、残りの部分のクロ-ニングと解析を進めている。
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[Publications] 田辺忠: "AcetylーCoA carboxylaseの構造と活性調節機構" ビタミン. 62. 591-600 (1988)
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[Publications] 田辺忠、高井俊行、横山知永子、渡辺公英、山本和彦: "ニワトリ成長過程における肝アセチンCoAカルボキシラ-ゼmRNAの変動" 脂質生学研究. 31. 159-162 (1989)
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[Publications] 田辺忠、横山知永子: "脂肪酸およびプロスタグランジン生合成律速酵素ーAcetylーCoA carboxylase およびcyclooxygenaseのcDNAクロ-ニングと構造" 循環器病研究の進歩. 10. 60-73 (1989)
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[Publications] 田辺忠、宮田篤郎、横山知永子: "ビオチン酵素の構造と機能" 代謝. 27. 13-19 (1990)