1988 Fiscal Year Final Research Report Summary
エネルギー代謝調節における視床下部-交感神経-褐色脂肪の役割とその異常
Project/Area Number |
63570132
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Pathological medical chemistry
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Research Institution | Hokkaido University (1989) Ehime University (1988) |
Principal Investigator |
斉藤 昌之 愛媛大学, 医学部, 助教授 (80036441)
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Project Period (FY) |
1988 – 1989
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Keywords | エネルギー代謝 / 肥満 / 視床下部 / 交感神経 / 褐色脂肪組織 |
Research Abstract |
満腹中枢とされている視床下部腹内側核(VMH)のエネルギー消費調節における役割を明らかにする目的で、実験動物としてラットを用い、熱産生臓器である褐色脂肪組織(BAT)の機能に及ぼすVMHの刺激ないしは破壊の影響を調べた。 1.VMHを電気的に破壊するとラットは過食となり肥満してくるが、我々は先に、VMH肥満ラットではBATの代謝活性が低下していることを脂肪酸合成を指標として報告した。 今回は、糖代謝の変化を調べるために、in vivoでBATへの^<14>C-2-デオキシグルコース(2-DG)のとりこみを測定した。2+DGのとりこみは冷却暴露で増加しBAT熱産生活性の良い指標であることを確かめた。更にこの冷却応答は、BATへの交感神経を予め外科的に切除しておくと消失するので、BAT代謝機能が交感神経の支配下にあることも明らかとなった。正常に比べてVMH肥満ラットのBATでは、交感神経の有無にかかわらず2-DGのとりこみは非常に定値となっており、冷却応答も減弱していた。これらの結果は、VMH肥満でのBATは、脂肪のみならず糖代謝機能も障害されていることを示している。 2.BATに対するVMHの作用が交感神経を介していることを証明するために、VMHを電気的に刺激した時のBAT交感神経活性をノルエピネフリン(NE)の代謝回転速度より推定した。カテコールアミン合成阻害剤を投与した後の組織NE含量の減少速度からNE代謝回転を調べた所、VMHの電気刺激によって数倍に亢進することが明らかとなった。この時2-DGのとりこみもやはり激増した。これらの成績を総合して、VMHは満腹中枢のみならず自律神経の中枢でもあり、交感神経の作用を介してBATの熱産生を支配しているものと結論した。そして、VMH破壊でみられる肥満は、エネルギーの過剰摂取に加えてBATの機能障害によるエネルギー消費の減少にも起因するとの新説を提唱した。
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[Publications] Masayuki Saito,: Brain Research. 481. 298-303 (1989)
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[Publications] Masayuki Saito,: American Journal of physiology. (1989)
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[Publications] 斉藤昌之: "神経と代謝調節神経性代謝制御、脂質代謝" 朝倉書店, 198-217 (1988)