1988 Fiscal Year Annual Research Report
HNK-1エピトープ(グルクロン酸3-硫酸)と末梢神経障害の機序
Project/Area Number |
63570136
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
有賀 敏夫 (財)東京都臨床医学総合研究所, 生体膜, 研究員 (50109948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 實 (財)東京都臨床医学総合研究所, 生体膜, 研究員 (40124466)
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Keywords | 自己抗体 / ミエリン関連糖蛋白(MAG) / マクログロブリン血症 / 糖脂質 / グルフロン酸3硫酸 |
Research Abstract |
自己免疫疾患で出現する自己抗体には糖鎖を抗原決定基とするものが知られている。最近マクログロブリン血症を伴う脱髄性多発性神経炎の患者血清中のIgM単クローン性抗体がmyelin-associated Glycoprotein(MAG)及び末梢神経由来の酸性糖脂質に共通の糖鎖を認識することが明らかになっている。我々は共通の糖鎖エピトープはグルクロン酸3硫酸であることを決定した。このエピトープははJ1、L1及びNCAMと呼ばれるGlyco-protienの表面糖鎖にもあることが最近わかり、神経及び免疫機構に重要な役割を演じていると推定した。末梢神経由来の酸性糖分脂質に対する免疫応答が脱髄性多発性神経炎の成因に果たす役割を明らかにする目的で今回、2つの実験を行なった。 1)この酸性糖脂質の主要な抗原であるsulfo-glucuronyl paragloboside(SGPG)を用いて、家兎の感作を試みた。対照群に比べ、SGPG皮内接種群では髄鞘のvesicular changeと後根神経節(DRG)に強く、末梢神経に弱く認められた。得られた抗血清は末梢神経由来のSGPGと強く反応した。また髄鞘蛋白分画のMAGと特異的に反応した。従って、SGPGによる末梢神経炎の惹起を示唆する所見がえられたことにより、この糖鎖エピトープに対する自己免疫応答が、この種の末梢神経炎の成因に深く関与している可能性が高い。(以上の結果をJ.Neuro chem.51,869-877,1988および蛋白質核酸酵素、34,225-234,1989に発表した。) 2)家兎による感作実験により、DRGに強い脱髄が観察されたことから、ヒトのDRGと交感神経節(symp.G)のSGPGに焦点をあてて解析した。SGPGはDRGではシアル酸あたり約1μgであるのに対し、symp.Gでは0.04μgであり、両者で異なった値を示した。免疫組織学検索では、患者血清中の抗SGPGIgM M蛋白により、有髄神経線維が特異的に染色された。sym.GによるSGPGの低値はsym.Gにおいて有髄神経線維が極めて少ないことを反映していると推定された。(以上の結果をJ Neurochemに発表予定である。)
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[Publications] 郡山達男、有賀敏夫、Robert,K.Yu: Journal of Neurochemistry. 51. 869-877 (1988)
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[Publications] 有賀敏夫、郡山達男: 蛋白質、核酸、酵素. 34. 225-234 (1989)
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[Publications] 有賀敏夫、楠進 他: Journal of Neurochemistry. 52. (1989)
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[Publications] 有賀敏夫: "脱髄のメカニズム3.末梢神経神経障害とグルクロン酸をもつ新しい酸性糖脂質-MAGの共通抗原" 科学評論社, 104-127 (1988)